『ブルーム・オブ・イエスタディ』(9月30日 公開)
『ブルーム・オブ・イエスタディ』より
ホロコースト(第二次世界大戦中のナチスによるユダヤ人大虐殺)研究に人生をかけているドイツ人研究者のトト(ラース・アイディンガー)。勤めている研究所で「アウシュヴィッツ会議」のプロジェクトリーダーとして頑張ってきたのに、感情的で偏狭な性格が災いしてリーダーから外されてしまいます。
そんなときにフランスからやってきたのが、ユダヤ系のインターンであるザジ(アデル・エネル)。
『ブルーム・オブ・イエスタディ』より
ホロコースト犠牲者の祖母をもつザジは、キュートな外見とは裏腹にとっぴょうしもない言動でトトを驚かせます。こんな女絶対ムリ! と思いながらも、彼女の不思議なパワーに次第に惹かれていくトト。そして恋に落ちる二人。実は二人の過去には驚きの共通点があり、それぞれが抱えているダークな秘密が明らかに……。
『ブルーム・オブ・イエスタディ』より
ホロコーストにとりつかれた鬱病のトトと病的なまでに躁気質のザジが織りなす毒舌たっぷりの恋の応酬には、笑えるツボがたくさん! しかし、物語が進むにつれて観客をあっと言わせるプロットがいくつも仕掛けられていて、前半はブラックユーモアで後半は心理ドラマのような、オフビートなラブコメなんです。
『ブルーム・オブ・イエスタディ』より
当事者ではない私たちは、ホロコーストを写真、文章、数字、被害者の言葉でしか知ることができません。しかし被害者と加害者には、言葉では語りきれないパーソナルなホロコースト体験があり、孫たちの世代へもその傷は受け継がれているのです。
つまり、ホロコーストは決して完結しない……。そんななかでも一瞬咲く“花”があり、その花こそが未来を照らしてくれるのでは?――といった前向きなメッセージが込められています。
『ブルーム・オブ・イエスタディ』より
第29回東京国際映画祭では東京グランプリ&WOWOW賞を受賞している話題の本作。ポラロイド写真のような艶やかな映像とサルコジ元フランス大統領夫人のカーラ・ブルーニの曲「ケルカン・マ・ディ ~風のうわさ」が絶妙なハーモニーを奏でて美しい!
さらに、ザジが見せるパリジェンヌファッションもとってもオシャレです。赤いコート、トレンチコート、花柄シャツ、だてメガネなど、秋のスタイリングの参考にしたいもの。
戦争映画が苦手な方や、ハリウッド的ラブコメに飽きた方にオススメの2本です!
『
オン・ザ・ミルキー・ロード』
9月15日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー!
配給:ファントム・フィルム
(C)2016 LOVE AND WAR LLC
『
ブルーム・オブ・イエスタディ』
9月30日(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開!
配給:キノフィルムズ・木下グループ
(C)2016 Dor Film-West Produktionsgesellschaft mbH / FOUR MINUTES Filmproduktion GmbH / Dor Filmproduktion GmbH
<TEXT/此花さくや>
⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】此花わか
映画ジャーナリスト、セクシュアリティ・ジャーナリスト、米ACS認定セックス・エデュケーター。手がけた取材にライアン・ゴズリング、ヒュー・ジャックマン、エディ・レッドメイン、ギレルモ・デル・トロ監督、アン・リー監督など多数。セックス・ポジティブな社会を目指してニュースレター「
此花わかのセックスと映画の話」を発信中。墨描きとしても活動中。twitter:
@sakuya_kono