Entertainment

「セックスレス!? あり得ない!」50代ベルリン受賞女優がメッセージ

 58歳の女性グロリアを主人公にした映画『グロリアの青春』が、現在公開中です。主演を務めたパウリーナ・ガルシアさんは、本作でベルリン国際映画祭の銀熊賞・主演女優賞を受賞。映画本編はもちろん、そこから派生して、セックスレスが増えている日本の若者へのメッセージまで、笑顔がステキなガルシアさんに語っていただきました!  チリの首都サンティアゴで暮らすグロリアはバツイチ。仕事を持ち、子供は自立しています。そんな彼女がダンスホールで年上の男性と出会い、惹かれていくのですが……。本作の脚本は、ガルシアさんのために書かれたもの。 パウリーナ・ガルシア「役者にとってあて書きされるということは、非常に光栄なこと。一生のうちに何度もあることではないわ。だから出演を決意したのは、まずそれが大きかったわね。  でも誘いを受けたのはまだ脚本が出来上がるより前のことだったから、そこからどんな脚本が仕上がったにしても、私はもう出るしかなかったのよ」と冗談めかして笑うガルシアさん。  出来上がったのは、ひとりの女性の第二の人生を描く素晴らしいものでした。 「私がおもしろいと感じたのは、これまで、人から見てもそうだし、彼女自身が振り返ってみても人生の脇役だった女性が、どうやって自分の物語の主役になるのか。その道筋を描いていた点ね」  とても魅力的で特別な存在に映りつつ、現代の女性の鏡でもあるグロリア。その個性をガルシアさんは、「彼女のことを強烈なキャラクターの持ち主だとは思わなかったわ。でも強さを持っている。彼女の強さは“もろさ”の結果から来ているの」と語ります。 「彼女はいつも何かを判断するとき、これで正しいだろうかと迷う。そして確固とした自信が持てずにいる不安定な時間を過ごす。けれど、そのもろさというか、傷付きやすさが、逆に彼女の強さになっているのだと思う」  冒頭に書いた通り、グロリアは58歳の女性。アラサー、アラフォーどころか、アラウンド還暦、あと少しで赤ちゃんちゃんこに手が届く年齢。って、チリでは関係ありませんが。  でもまぁ、とにかく、今の女性は、みんな若いですよね。アラカンだろうが、恋をしたければする。関係の延長にはセックスも待っています。本作にもグロリアと恋人との大胆なセックス描写が登場します。  そこで「今、日本の若い世代にはセックスレスが増えていて、中には恋人の存在すら煩わしいのでいらないという人もいます」というお話をしてみたところ……。 パウリーナ・ガルシア 最初は耳を疑うそぶりを見せたガルシアさん。それから、もう一度、こちらの言っていることを確認し、「うそでしょう!? 本当なの??」と、周囲にいた20代と思しき若い宣伝の女性に確認を求めて困らせる一幕も。  それから何度も首を横に振り、ちょっと間を置いてから、次のように語ってくれました。 「セックスは人生における最大の贈り物なのに、それをしないというのは私にはまったく理解ができない。それに、痛みを伴わない幸せというのはないわ。人生を楽しむには代償が付きまとう。  でもね、それを怖がって行動しないことにも代償というのは付きまとうの。グロリアは性をきちんと謳歌している。グロリアも代償を払うけれど、いろんなことを経験して、その末に、彼女は自由という自分の人生を獲得するの。そこを避けて通ろうとしても、それは無理。  拒まれるのが嫌だからといってこもっていても、それに対しても代償は来る。どんなに転んでも、時間がくればまた立ち上がれる。そういうことを繰り返して、初めて何が幸せなのかを知るの。 パウリーナ・ガルシア,グロリアの青春 だからそうね。私からの助言は、グロリアのようにピスコサワー(ペルーのカクテル)を飲んで、ダンスに出掛ける。そういうことを試してみて欲しいわ」  ところで、映画通の方なら“グロリア”という名前を聞いて、インディペンデント映画の父と称えられ続けるジョン・カサヴェテス監督が、妻で大女優のジーナ・ローランズと作り上げた傑作映画『グロリア』を思い浮かべるかもしれません。  実際、ガルシアさんいわく本作は「カサヴェテスの『グロリア』へのオマージュでもあるのよ」とのことで、さらにガルシアさんご自身、ジーナ・ローランズとカサヴェテスを崇拝しており(大の映画好きとして知られる俳優の西島秀俊さんもカサヴェテス愛を公言しています)、「特に『こわれゆく女』は演技の面で常に参考にしているわね」と教えてくれました。  そんな、ご本人にとっても特別な映画であろう本作でのベルリン国際映画祭での主演女優賞受賞。公式上映で起きた10分間にわたるスタンディングオベーションには「信じられなかったわ。観客から伝わってくる波がどんどん自分のほうへやってきて、それに包まれた感じで圧倒されてしまったの」と感激を口に。  しかし受賞のときは、正直、それほど感動しなかったそうで、「実感が持てなかったのね。大変な賞を受賞したのだと実感したのは、チリに戻ってからだったわ」と声をあげて笑っていました。 <TEXT・PHOTO/望月ふみ> ※『グロリアの青春』はヒューマントラストシネマ渋谷、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開中 配給:トランスフォーマー R15+ (C) 2013 Fabula-Muchas Gracias オフィシャルサイト http://gloria-movie.com/
望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ