ペットの不調に気づけなかった…手遅れを引き起こす、人間の心理|ペットロス Vol.8
<16歳の愛犬を亡くした心理カウンセラーが考えるペットロス Vol.8>
どんな別れにも心残りはつきものです。それが分かっていても、辛かった野良生活に終止符が打たれ、「これからようやく幸せになれる」というときに、あっけなく自動車事故で逝ってしまった猫のタリのことを思うと、やりきれなさでいっぱいになります。
あまりにも苦労と幸せのバランスが悪すぎるような気がしてしまうのです。
運命という言葉で割り切ってしまうには、あまりにも残酷な現実を私はまだ受け入れられません。
「いったいタリはなんのために生まれ、どうして私と出会ったのか」
「私に何を教えようとしてこんなにも生き急いでしまったのだろう」
タリを思い出しては、そんなことばかり考えています。でも、ひとつだけ分かったことがあります。
「生きている間にできる限りのことをしてあげることが、愛する者を失った後の後悔を軽くしてくれる」ということです。
そのためには、ペットの老いや病気に敏感でなければなりません。ところがこれが、けっこう難しいのです。
なぜなら人は「受け入れたいと思うものしか見ようとしない」生き物だからです。その人にとって受け入れがたいこと、不快な感情や不安などを引き起こす出来事に直面したとき、たとえ目の前で起こっていたとしても、無意識的に「無かったこと」にしてしまったりします。
これは、辛い事実や悲しい出来事によって心が壊れないようにするための大切な防衛手段です。そうやって私たちは身を守ります。
いつでも自分を頼り、自分に無条件の愛情を向けてくれる子どものような存在であるペットが、自分より先に老いていくという現実を受け入れるというのは、なかなか簡単にはいきません。私もそうでした。
以前に撮影した写真と見比べると毛並みがぼそっとした感じになって白髪が増えたり、眠っている時間が増えたり、高いところへの上り下りがおっくうそうになったり・・・・・。
今思えば、猫のでんすけも大型犬のケフィも、病気を発症する前にも明らかに「老いの前兆」と思えることがいくつもありました。
よく旅行に連れて行っていたこともあってケフィの変化は、でんすけよりも、さらに分かりやすかったように思います。
うちの子になる寸前で、逝ってしまった猫のタリ
ペットの老いや病気に「気づきたくない」心理
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