周りの男性に聞くと、カバンじか置きはしないという人も結構いて安堵しました。
「カバンを土足の床に置く人は、大丈夫かなと思う。僕はできるだけ椅子に置いています。前に吉野家に入ったとき、米粒や玉ねぎが大量に落ちている汚い床の上にカバンをドサーッと置いたおじさんがいました。
帰りがけに「よいしょ」とそのカバンを背負ったら底についた玉葱や米粒がこっちに降ってきて、発狂しそうになりました」
と、トラウマもののエピソードを語ってくれた30代男子。
カバンじか置き男子は、自分のことも周りのことも気にしていないので、こういった惨事が起こりがちです。電車などで明らかに汚いカバンの底が押し付けられるとゾッとします。
「
じか置きはカバンによりますかね……。直立する底が硬いヴィトンなどは置くこともありますが、ふにゃーとなるジバンシイのバッグは置かないです」
というのは、ブランド好きの20代男子の意見。
「仕方なく置かざるを得ない時はある。でも誰が何を踏んだかわからない地べたに置くのは抵抗がある」
という40代男子の意見もありました。男にはカバンを床に置かなければならない時もあるのです……。
潔癖性の40代男子の意見も伺いました。
「家の中にも、踏んじゃいけない箇所があって、まちがって踏んじゃったらお風呂に急いで入ります。そんなだから出かけるのも大変で、床になんか絶対置きません。
荷物が重くてもキャリーバッグは使いません。底の車輪が転がると菌が噴射されそうなイメージ。あと、仕事先で、人に荷物を預けることもしません。勝手に床に置かれたらイヤですから」
ここまでくると生きづらそうです……。日本人の潔癖性かもしれませんが、見えない菌を想像してしまうと、地面には絶対に置けません。人に荷物を預けると勝手に床に置かれる問題、私も何度か経験があります。空気が悪くなるので何も言えませんが……。
邪気や菌など気にしすぎると不安が増すばかりですが、先日、カバンを床に放り投げた男性に「平気なんですか? 菌とか……」と聞くと「とくに気にしません」という答え。
その、カバンじか置き男子は、「どこでも山とかでも地面に置いてます。だから室内でも床に置かないと逆に悪いかなって」というご意見でした。山でじか置き、それはワイルドで逆に好感度高いです。そして
地面に置いたらずっと地面、と一貫しているのも潔いです。地面に置いたり、椅子に置いたりと、ブレる行為が菌やホコリや邪気をまき散らしているのです。
カバンじか置き男子には、もしかしたら身の程をわきまえた気遣い男子も5%くらい含まれているのかもしれません……。適度に距離を保ちながら、優しく見守るようにしたいです。
<TEXT&ILLUSTRAION/辛酸なめ子>
【辛酸なめ子 プロフィール】
東京都生まれ、埼玉育ち。漫画家、コラムニスト。著者は『
辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)、『
辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎)、『
女子校育ち』(筑摩書房)など多数。