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「恋人は自分という国への移民」。『ヘドウィグ~』の監督が新作を語る

『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』などで知られるジョン・キャメロン・ミッチェル監督の新作『パーティで女の子に話しかけるには』が公開中です。  1977年の英国を舞台にしたラブストーリーで、主人公の内気なパンク少年エンが恋する“遠い惑星からやって来た”美少女ザンを演じるエル・ファニングのキュートさも話題になっています。来日したキャメロン監督から話を聞きました。
ジョン・キャメロン・ミッチェル監督

ジョン・キャメロン・ミッチェル監督

恋人は自分という国への移民

――主人公のエンは他の惑星からやってきたザンに恋をします。「君のウィルスになりたい。感染したい」といったセリフが印象的でした。キャメロン監督にとって恋とは? キャメロン:恋は僕らを救ってくれるものじゃないかな。恋に落ちない世界を想像してみてよ。まるでアリみたいだよね。働きアリさ。 でも一方で愛というのは、人にリスクを取らせる。自分とは違う存在と親密に直面するわけだし、どの恋人も自分という国への移民だと言える。それって怖いことだよね。だけど、同時に僕らに新しいアイデアや考えをもたらしてくれる。
『パーティで女の子に話しかけるには』

『パーティで女の子に話しかけるには』より

――ザンを演じたエル・ファニングが本当に魅力的でした。 キャメロン:今まで一緒に仕事をした女優さんの中で、一番楽しかった。彼女はすごくポジティブでプロフェッショナルなんだ。そして聡明。最高だった。特にファーストテイクが最高。とても頼れる存在だったよ。 よく覚えているのは最後、エンに「I love you」と言う場面。いいテイクはすでに撮れていたんだ。でもエルが、「ちょっと時間をください」と言って。少し時間を置いてから、彼女が僕を見た。僕は頷いて、「アクション」と言った。そしてそのあと、彼女はすごい演技を見せてくれたんだ。この作品の核になったよ。
『パーティで女の子に話しかけるには』より_2

『パーティで女の子に話しかけるには』より

自分で何かを作り出す、そうしたパワーが必要

――『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』と同じく、本作にもパンク精神が溢れています。現代に必要なパンク精神とは? キャメロン:若い人たちはデジタルカルチャーによって動けなくなっていると思う。情報過多でマヒしちゃってるんだ。すべてがすでになされたことばかりで、自分が新しいものを作り出そうという気にならない。若さって、いろんなものを試したり感じたり、リスペクトある形でセックスを経験してみたり、そういう色んなことを体験していく時期で、変化と直結しているもののはず。 パンクっていうのは音楽的な面だけじゃなくて、DIYの精神、自分で何かを作り出すということ。今はそういうパワーが必要だと思うよ。
『パーティで女の子に話しかけるには』より_3

『パーティで女の子に話しかけるには』より

――監督は魂の片割れを探す、自分の片割れに出会うというテーマに惹かれているように感じます。 キャメロン:僕らが人間として、自分は完全体だと思うことができたなら、逆にきっとさまざまな物語は生まれてこないし、宗教の必要性もなくなるかもしれない。人間の複雑な部分が薄れて、ただ食事を摂取して生きるような存在になってしまうかもしれない。 どのストーリーも、自分が必要としているものを手にしていないから生まれてくるのだと思うんだ。だから、こうした物語になるんじゃないかな。
『パーティで女の子に話しかけるには』より_4

『パーティで女の子に話しかけるには』より

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同じ場所にいることがより重要になる
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