だが、551蓬莱の豚まんは、当然お持ち帰り用のチルド商品も売られている。買って家で食う、というのももちろん可能だ。しかし私はそれでも新大阪駅で豚まんを買ったことがない。
なぜならその真横にスターバックスがあったからだ。
だから、何だと言われそうだが、田舎の人間にとっては、蓬莱も珍しいがスタバも珍しいのだ。
今調べたら、我が県にはスタバが3軒しかない。それすら「いつの間にか増えてやがる!」という感想だ。
それに、豚まんはおとりよせできても、何とかフラペチーノはできない。よっていつも新大阪では吸い寄せられるように、蓬莱横のスタバに行っていたのだ。
よく知っているし、美味いこともわかっているが、意外と食べたことがないのが551蓬莱の豚まんである。
この豚まんだが、想像以上の豚である。普通コンビニなどで食べる肉まんだと肉の他、野菜やたけのこ、しいたけなどが入っておりそれが甘辛く味付けされている印象だが、この豚まんは、豚とたまねぎのみ、さらに豚はミンチ状ではなくダイス状で、味付けも濃くない。豚のうまみを存分に味わってくれというストロングスタイルだ。
美味いだろうなとは思っていたが、メチャクチャ美味かった。どのぐらい美味かったというと、4つあったのに家族に分け与えることなく全部自分で食ったぐらいだ。
中年女が独り占めしたくなる、つまり童心にかえる味、ということである。
焼売の方も、豚まんに負けない豚だ。
一目見た瞬間「でかい」と声が出た。さらに皮が非常に薄くグリンピースなどは乗っていない。まさに豚の塊である。

焼売 551蓬莱 公式HPより http://shop-551horai.co.jp/shop/g/gH0210H/
豚まんも焼売も、これだけ豚にも関わらず、くどくなく、あっという間に完食してしまった。
551蓬莱は、他にも叉焼まんや、エビ焼売他、期間限定の商品なども発売しているようだが、どれも間違いなく美味いだろう。
次、新大阪に行くことがあれば、今度こそ551蓬莱に寄ってみたい。おらが村にだってもうスタバが3軒もあるのだ。そろそろスタバコンプレックスから解き放たれ、その地域の名物に目を向ける時期だろう。
<文・イラスト/カレー沢薫>
【カレー沢薫(かれーざわ・かおる)】
1982年生まれ。OL兼漫画家・コラムニスト。2009年に『
クレムリン』で漫画家デビュー。自身2作目となる『
アンモラル・カスタマイズZ』は、第17回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出。主な漫画作品に、『
ヤリへん』『
やわらかい。課長 起田総司』『
ねこもくわない』『
ナゾ野菜』、コラム集に『
負ける技術』『
もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃』『
ブスの本懐』などがある