以前、似たような状況の女性を取材したことがある。40代後半の彼女は、学生時代、音楽をやっていたのだが、その年齢になって再度、アマチュアバンドを組んで活動しはじめた。
しかし、夫はまったく関心を寄せてくれない。大学生と高校生になった子どもたちも「がんばってね」とは言うものの、ライブなどには来てくれない。
そんなとき、ネットを通じて彼女のファンだという男性と知り合った。彼は足繁くライブに来てくれ、時には荷物の搬入なども手伝ってくれるようになった。そして彼女は、同世代の彼と恋に落ちた。
彼女がそのとき言ったのは、「
夫は生活のパートナー、彼は人生のパートナー」というひと言。
日本ではまだまだ、「結婚したら離婚してはいけない」という心理的な縛りが大きい。形を壊すことへの恐怖感も強い。しかも、女性の経済力がまだ男性のそれと同等になっていない上、ひとりあたりの収入は減少しているので、離婚したら食べていけないのが現状だ。
だからこそ、一昔前に男たちが言っていたように、女性たちにも「結婚と恋愛は別」という価値観が育ってきたのではないだろうか。善悪の問題ではなく、男も女も、素の自分で没入できる「恋」という場を求めているのかもしれない。
<TEXT/亀山早苗>
【亀山早苗】
フリーライター。男女関係、特に不倫について長らく取材し、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖』など著書多数。Twitter:
@viofatalevio