犬が突然立ち上がれなくなる…高齢犬に多いメニエール病|ペットロス Vol.10
<16歳の愛犬を亡くした心理カウンセラーが考えるペットロス Vol.10>
ケフィが倒れた翌朝、私はケフィを家族に託し、後ろ髪引かれる思いで仕事に出かけました。ケフィの様子は昨夜とまったく変わらず、立ち上がれる気配はありません。ご飯も食べないし、トイレもその場でしてしまいます。
23キログラム前後と、ゴールデンレトリーバーにしては小柄なケフィですが、ひとりで抱きかかえるのは一苦労です。家族は長座布団を担架代わりにして車まで運び、朝一番で動物病院へと向かいました。
出勤途中、海で楽しそうに泳いでいたケフィの姿や雪山ではしゃいでいた様子、この前ボール投げをしたときの元気な走りっぷりや、ちょっと長めのコースを力強い足取りで歩いてたおとといの散歩のことなどが、次々と浮かんできて、いつの間にか涙が頬を伝っていました。
「あれが最後だったのかもしれない。もう2度とあんな元気な姿を見ることはないのかもしれない」
そう思うと、悲しくて、切なくて、苦しくて、涙が止まりませんでした。まるで大きな石を口から無理矢理押し込まれたように胃のあたりがずっしりと重く感じられました。
「今は考えるのは止めよう」「ここは電車のなかなのだ」と自分に言い聞かせても、次から次へと涙があふれ、自分の意思ではどうにもなりません。一瞬にして地獄に突き落とされたような、まるで長い、悪い夢を見ているような気分でした。
昼休みになり、携帯電話には動物病院に向かった家族から、何らかの連絡が来ているはずでした。状況を知りたいと思いながらも真実を知ることが怖くて、私はなかなか携帯電話を見ることができませんでした。
診断名を聞かないうちは楽観的な希望を持つこともできます。でも病名を知ってしまったら・・・・もうその現実を受け入れるしかなくなってしまいます。
「一生寝たきりです」
「先はそう長くありません」
獣医師がそう判断していたら、いったいどうしたらいいのか。私はその診断を受け入れることができるのか。不安と恐怖で手は震え、目は涙でかすみ、携帯電話を持つことも難しい状態でした。
だから「メニエール病。前庭障害。治る可能性あり。数日間入院」というメールを見た瞬間、思わず「神様、ありがとうございます!!」と声を上げてしまいました。周囲の目なんか、まったく気になりませんでした。
今思えば、無神論者の私がそんな言葉を発するなんて、とっても厚かましいことだったと思います。でも、そうせずにはいられなかったのです。メールを見たとき、本当に本当に心の底から「神様はいる!」と思えましたし、だれかにお礼を言わずにはいられませんでした。
メールを読み終えると全身から力が抜け、椅子に倒れ込みました。先ほどまで胃を占領していた塊が、まるで溶けて無くなったかのように軽くなり、ぽろぽろと涙がこぼれました。ついさっきまでは冷たく感じていた涙が、なぜかとても温かく感じました。
電車の中なのに涙が止まらない
メニエール病で「治る可能性あり」!
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