スタバや婦人服店を「無料のキャバクラ」化するオジサンたち|辛酸なめ子
でもとくにスタイリスト的なおしゃれオーラはなく、妻とか彼女のために選んでいる風でもありません。「このダウン、あなたが着るなら大きい?」となぜか店員のサイズに合わせようとしていました。
その男性は、ダウンジャケットをプッシュされると「まあいいや、考えとく。もうダウンは2、3着買ったから」と、発言していて驚きました。なんと女もののダウンを2、3着既に買っているとは……。部屋はどうなっているのでしょう。
アパレル業界は昨今厳しいので、太客は大切にしなければなりません。彼はレディースのニットを購入。店を出て行く男性のあとを、女性店員が小走りで追いかけ、しきりに話しかけていたのが印象的でした。誰を指名するか、誰から買うかは男性に選択権があります。アパレルでキャバクラ感に浸るとは、結構な穴場です。
でも、お金が尽きてあまり買えなくなったら疎ましがられることになってしまうのが切ないです。疑似キャバ男子が行き着く先は、動物相手です。猫カフェで数百円のエサを買って、猫をはべらせて満足げなおじさんの姿をご覧になったことはないでしょうか。猫はえり好みしないし、エサさえあれば無邪気に寄ってきてくれます。
さらに進むと、公園によくいるハトおじさんになったりするのでしょうか……。もはや人間の女への執着はなくなり、慈愛の存在になれそうです。
<TEXT&ILLUSTRAION/辛酸なめ子>
【辛酸なめ子 プロフィール】
東京都生まれ、埼玉育ち。漫画家、コラムニスト。著者は『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)、『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎)、『女子校育ち』(筑摩書房)など多数。
キャバ嬢おじさんの行き着く先は「公園の鳩」
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