ドイツにおけるシングルマザー、ドラッグ、そして移民
物語に華を添えるのはサリーと恋に落ちるラウラ(アンナ・マリア・ミューエ)。もちろん彼女もサリーの障害に気づきません。そんなラウラは小さな子供をもつシングルマザー。ラウラの息子を当然のようにベビーシッティングするサリーの様子から、ドイツではシングルマザーであることがポジティブでもネガティブでもなく、当たり前に世間に受け入れられていることが見てとれます。

『5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生』より
反面、ドイツ社会の闇も覗ける本作。例えば、フツーの若者がいとも簡単にドラッグにアクセスできることや、ホテルの厨房で働くアフガニスタンから移民したハミル(キダ・コドル・ラマダン)が陥る就業問題からドイツの社会問題が映し出されています。
また、ドイツ人とスリランカ人のハーフであるサリーも、厨房のスタッフにアジア人であることを軽くからかわれるシーンが。サリーを演じるコスティア・ウルマンも実際にドイツ人の父とインド人の母をもちますが、私たち日本人の目にはサリーが白人として映ることに対し、ヨーロッパ系白人の目にはサリーはアジア人として映るという、私たち日本人とドイツ人の感覚の違いにも驚きます。

『5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生』より
本作を手掛けたのは、反ナチス抵抗組織を描いた『白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々』(2005年)といった社会派映画で名高いマルク・ローテムント監督。社会的な視点がさりげなく盛り込まれているのも見所です。
日本映画『バルトの楽園』(2006年)で美少年ぶりを発揮したコスティア・ウルマンもいまや34歳。男の色香を漂わせたコスティアで目の保養もできますよ。
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此花わか
ジェンダー・社会・文化を取材し、英語と日本語で発信するジャーナリスト。ヒュー・ジャックマンや山崎直子氏など、ハリウッドスターから宇宙飛行士まで様々な方面で活躍する人々のインタビューを手掛ける。X(旧twitter):
@sakuya_kono