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ドラマ『anone』名ゼリフの意味、『カルテット』とのつながり…もっと楽しむ見方

ニセモノ=虚構が大切な居場所になることもある

 もうひとつ、本作の重要なカギとなりそうなのが、“ニセモノ”というキーワードだ。  第1話で、ハリカたちと、亜乃音と、持本&青羽は、接点を一切持たず別々に物語が進行するが、その3組が唯一出会ったのは、亜乃音が捨てようとした偽札の束をめぐって争奪戦が繰り広げられたときだ。“ニセモノ”を介して、交わるはずのなかった他者同士が関わりあい、交差するというのは、なにやら示唆的だ。  また、ハリカは、病院の外に出ることができないカノンのために、幼少期の思い出話を聞かせる。それは、森の中で魔法使いの家のようなツリーハウスにおばあちゃんと暮らした、ジブリアニメのようにファンタジックで幸せな日々の思い出だった。  しかし、ドラマの終盤で一転、その思い出はハリカの捏造だったことが判明する。実はそこは、親に見放された子供たちを虐待に近い方法で治療する、問題のある更生施設だったのだ。そのあまりに辛い記憶から逃れるために、彼女は思い出を虚構のものに書き替えていたのである。 「大切な思い出って、支えになるし、お守りになるし、居場所になるんだなって、思います」  という素敵なセリフで語られるハリカの思い出が反転し、“ニセモノ”だったことがわかる終盤の展開は、一見、坂元作品らしからぬ残酷なものだ。だが、カノンがかつて同じ更生施設でハリカと暮らしていた子供だったことが告げられ、ハリカもまたカノンにとっての“大切な思い出”だったことが明かされると、物語には一気に明るい光が差し込んでくる。  たとえ“ニセモノ”でも、その虚構の思い出話が、ハリカとカノンを引き寄せる大切なコミュニケーションツールとなり、2人をつなぐ居場所になったことは間違いない。 「行った旅行も思い出になるけど、行かなかった旅行も思い出になる」とは『カルテット』に出てくるセリフだが、失われたもの、叶わなかったこと、そして虚構という“ニセモノ”にすら、人はかけがえのない生きる希望を見出せる。坂元裕二はずっとそのことを描いてきたし、『anone』はきっと、その集大成のようなドラマになるに違いない。 <TEXT/福田フクスケ>
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