病気の愛犬と過ごした、つらい毎日が教えてくれたこと|ペットロス Vol.11
若い犬であれば、多少の病気やケガで休養しても、またもとの生活に戻ることもできるでしょう。でも、ケフィは次の誕生日で14歳を迎える犬でした。すでにゴールデンレトリーバーの平均寿命は超え、客観的に考えれば明らかに老犬です。運動しなくなればすぐに筋力が落ちてしまうことは想像に難くありません。
一度落ちた筋力をケフィの年齢で取り戻すことは至難の業です。そうなれば寝たきりになり、瞬く間に弱ってしまうことでしょう。
それはケフィとの毎日が様変わりすることを意味し、私の人生の一部が大きく失われることでもありました。そしてその先には、「ケフィを永遠に失う日が来ることを受け入れる」という、課題が待っています。
私は無意識のうちにその受け入れがたい課題に直面することを避け、現実を否認し、奇跡を期待したのだと思います。
幸いなことに、ケフィは私の願いに応え、驚くような回復力を見せました。退院から1月後には、今までと同じくらいの距離を、今までとほぼ同じスピードで歩けるようになりました。
よくよく見れば、「ビクターの犬」のような傾きは少し残っていましたが、すれ違う人も、だれもそ首の傾きに気づかなくなりました。目の焦点も合い、表情にも生気が戻ってきました。階段の上り下りは苦手になったし、ボール投げも難しくなったけれど、それ以外の部分はほぼ元通りです。
そうしてケフィは、私が辛い課題に直面するまでの準備期間をくれました。それと同時にケフィとの「ありきたりの毎日」が、実は「有り難い毎日」であり、かけがえのないものであることを教えてくれました。
「あと何回、こんな豪雨の中を一緒に歩けるか分からない」
「あと何回、かじかむ手でリードをにぎりしめる機会があるか分からない」
そう思うと、悪天候での散歩でさえ、とっても貴重な経験だと思えるようになりました。
「めんどうくさいなぁ」と思う状況があるありがたさ。「おっくうだなぁ」と思いながら散歩できる喜び。私は、「ずっと、ずっと、そんな幸せをかみしめながら、ケフィと一緒に歩いて行こう!」と誓ったのです。
<TEXT/木附千晶>
⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
【木附千晶プロフィール】
臨床心理士。IFF CIAP相談室セラピスト。子どもの権利条約日本(CRC日本)『子どもの権利モニター』編集長。共著書に『子どもの力を伸ばす 子どもの権利条約ハンドブック』など、著書に『迷子のミーちゃん 地域猫と商店街再生のものがたり』など
「ケフィを失う」までの準備期間をくれた
よくよく見れば、「ビクターの犬」のような傾きは少し残っていましたが、すれ違う人も、だれもそ首の傾きに気づかなくなりました。目の焦点も合い、表情にも生気が戻ってきました。階段の上り下りは苦手になったし、ボール投げも難しくなったけれど、それ以外の部分はほぼ元通りです。
そうしてケフィは、私が辛い課題に直面するまでの準備期間をくれました。それと同時にケフィとの「ありきたりの毎日」が、実は「有り難い毎日」であり、かけがえのないものであることを教えてくれました。
「あと何回、こんな豪雨の中を一緒に歩けるか分からない」
「あと何回、かじかむ手でリードをにぎりしめる機会があるか分からない」
そう思うと、悪天候での散歩でさえ、とっても貴重な経験だと思えるようになりました。
「めんどうくさいなぁ」と思う状況があるありがたさ。「おっくうだなぁ」と思いながら散歩できる喜び。私は、「ずっと、ずっと、そんな幸せをかみしめながら、ケフィと一緒に歩いて行こう!」と誓ったのです。
<TEXT/木附千晶>
⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
【木附千晶プロフィール】
臨床心理士。IFF CIAP相談室セラピスト。子どもの権利条約日本(CRC日本)『子どもの権利モニター』編集長。共著書に『子どもの力を伸ばす 子どもの権利条約ハンドブック』など、著書に『迷子のミーちゃん 地域猫と商店街再生のものがたり』など木附千晶
臨床心理士。「CAFIC(ケフィック) 子ども・おとな・家族の総合相談 池袋カウンセリングルーム」主宰。子どもの権利条約日本(CRC日本)『子どもの権利モニター』編集長。共著書に『子どもの力を伸ばす 子どもの権利条約ハンドブック』など。著書に『迷子のミーちゃん 地域猫と商店街再生のものがたり』、『いつかくるペットの死にどう向き合うか』など。
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