
『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』より
クメイルが実家に戻るたびにお祈りを強要するほど、敬虔なイスラム教徒の両親。イスラム教徒というと、男尊女卑を思い描きますが、クメイル一家では母親が完全に主導権を握っています。クメイルの将来について口を出すのも母親だし、白人と付き合うクメイルを勘当したのも父親ではなく母親。クメイルを慰めるのは母親ではなく、父親のほうなのです。こういったささやかなシーンにも、
“人を宗教や性別などのステレオタイプで判断してはいけない”というテーマが散りばめられています。

『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』より
人を作るアイデンティティはなんなのか? 生まれた場所、言葉、宗教、文化、性別……これらひとつの要素だけを取り出して、人をカテゴライズしてはいけない――
人は複雑で多様だからこそ、お互いから学び成長できるのだから。トランプ政権下の分断されるアメリカで本作が大ヒットした理由は、こういったメッセージが心に響くからでしょう。
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<TEXT/此花さくや>
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ジェンダー・社会・文化を取材し、英語と日本語で発信するジャーナリスト。ヒュー・ジャックマンや山崎直子氏など、ハリウッドスターから宇宙飛行士まで様々な方面で活躍する人々のインタビューを手掛ける。X(旧twitter):
@sakuya_kono