豆腐一丁よりビッグ!奈良県・吉野のくず餅/カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」
【カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」Vol.21 奈良県「吉野の葛餅」】
今回のテーマは「吉野の葛餅(くずもち)」だ。
随分有名どころ、というか鉄板なところが来たな、という印象だが、改めて考えると「貴様は吉野葛の何を知っているのだ」と言う気もするし、「今、一瞬、信玄餅のこと考えただろ?」と言われたら、二の句が継げない。
まず葛餅の葛は植物であり、その根から取れるでんぷんを粉末状にしたものが「葛粉(くずこ)」、その葛粉を溶かし砂糖などで味付けし固めたものが「葛餅(くずもち)」である。
葛はすでに奈良時代からこのように食用にされてきたそうだが、最初にそれをやりだした奴は一体、何を根拠にどんな自信があって、葛の根を粉末にしてみようと思ったのか。
やはり太古から「気づく奴は気づく」のだろう。自分だったら根っこを生で食って腹を壊すぐらいしか出来ない。奈良時代に生まれなくて良かった。
吉野はその当時から葛の産地であり、今も「吉野葛」として有名なのである。
ちなみに漢方の葛根湯(カッコントウ)もその名の通り、葛の根である。生で食って腹を壊すどころか薬にまでしてしまっている。我々が生きていけるのはこういう「気づく側」の人のおかげと言っていい。
今回送られてきたのは「横田福栄堂」のくず餅である。奈良平城京の近くに店舗を構えるという、まさに本場、の一品だ。
店舗のHPに飛んだところ、早速「手づくりみそせんべい本舗」という力強いキャッチが出迎えてくれた。
「くず餅がイチオシではないのか」
一瞬そう思ったが、それは「香川県民は息の代わりにうどん吸ってるんでしょ」というような偏見にすぎない。
それに、横田福栄堂のエースはみそせんべいのようだが、くず餅だってちゃんと三番目にラインナップされている。
「三番手かよ」と思わなくはなかったが、他にくず餅の老舗は多くあろう中で、この店が選ばれたのは何か意味があるに違いない。
そう思い、くず餅のページに行ってみると、ここではくず餅は、プレーンな「白」と「小豆」の二種類が販売されているようだ。
どちらも美味そうだが一つ気になることがある。「1個入り」と言う表記だ。ちなみに1個756円である。
考えても仕方ないので開けてみたところ、本当に「1個」としか言いようがなかった。
豆腐一丁より一回りでかいぐらいのくず餅が「1個」入っていたのである。
意表を突かれた。
完全に個包装されたくず餅が何個か入っているのをイメージしていたからだ。
「やっぱりお前、信玄餅のこと考えてただろ」と言われたら、その通りです、と言うしかない。
この形が吉野くず餅のスタンダードなのか、吉田福栄堂独自のものかは不明だが、とにかくくず餅が一塊でやってきたのだ。かなり迫力のあるたたずまいである。「業務用」という感じがする。


奈良平城京の近く横田福栄堂の三番手、くず餅

くず餅が一塊でやってきたのだ
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