
写真は楽天市場販売ページより https://item.rakuten.co.jp/store-naratv/11331005/
これを好みの大きさに切り分けて食べるのだが、もう一つ重要なのは、付属の黒蜜ときな粉も一袋という点である。
これは配分をミスると、黒蜜やきな粉が余ったり、逆に最後の方、くず餅オンリーで食うことになってしまう。
赤福ですら小分けされる時代に、ここまで「自分でやれ」というスタイルは逆に珍しい。
だが逆に「自由にやれる」ということでもある。
「俺は残り全部くず餅のみで食うことになっても、最初の一口に、黒蜜きな粉全部ブッこむ」というならそうしてもいいし、そもそも切り分けるかどうかさえ、自由だ。冷奴みたいに、くず餅1丁のまま、黒蜜ときな粉を全部かけてもいいのである。
ある意味、切り分けていないことにより、ケーキ1ホール丸ごと食う、みたいな夢のある食い方ができるのだ。
相手に至れり尽くせりされると逆に自由が奪われる、という真理をこのくず餅から学ぶことができた。
自分は独創性にかけるので、普通に切り分けて食べようとしたのだが、切り分けて食べる時点で「こんなに強かったっけ?」と思った。
弾力の強さが想像と全然ちがう。切るのに苦労するぐらい強い。
だがグミでもハードタイプが好きなので、この弾力の強さは嬉しい。
私は黒蜜が好きなので、餅に対して多めにかけることにした。こういう調整ができるのもよい。
食べてみるとやはり、強い。だがくず餅自体は甘さ控えめで黒蜜がよくあっている。
おそらく、初回黒蜜をかけすぎたせいで、最後ノー黒蜜で食べることになるだろうが、初回自分好みの味で食べれたので満足だ。
しかし「吉野くず餅」と言われたら「ああ、あれね」と思うが、いざ実物を前にすると随分イメージと違うものである。百聞は一見にしかずだ。
<文・イラスト/カレー沢薫>
【カレー沢薫(かれーざわ・かおる)】
1982年生まれ。漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。主な漫画作品に、『
ヤリへん』『
やわらかい。課長 起田総司』、コラム集に『
負ける技術』『
ブスの本懐』『
やらない理由』などがある