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妻が夫を捨てる時、最後のスイッチはどこに?不倫ドラマ『あな家』と離婚問題

亀山早苗の不倫時評――『あなたには帰る家がある』の巻 vol.3>

 話題のTBS金曜ドラマ『あなたには帰る家がある』(金曜、夜10時)、略して『あな家』。夫婦二組の不倫を描いた本作を、不倫事情を長年取材し著書多数のライター・亀山早苗さんが読み解きます。(以下、亀山さんの寄稿)


 ドラマ『あなたには帰る家がある』の第6回で、佐藤秀明(玉木宏)・真弓(中谷美紀)夫妻と、茄子田太郎(ユースケ・サンタマリア)・綾子(木村多江)夫妻の間で、それぞれ妻から「別れよう」「離婚してください」という言葉が出る。

妄想が暴走…不倫相手の娘に「私をママと呼んで」


 綾子(木村)は秀明(玉木)に、「あなたのことは遊びだった。愛していません」と言われたことを、「秀明さんは奥さんに縛りつけられている」と解釈する。そしてついには、ある朝、佐藤家に乗り込んできて、中学生になったばかりの娘・麗奈に「あなたのパパと私は愛し合っているの」「これからは私をママと呼んで」と語りかける。


 妻が愛人に会いに行くケースはときどき見聞きするが、愛人が彼の家に乗り込むのはレアケースかもしれない。とはいえ、まったくないわけではないが。

 こういう場合、愛人側は「自分は彼に愛されている」という確信をもってしまうのだ。それがたとえ妄想と言われてしまうものであっても。特にこのドラマのケースでは、横暴な夫に仕える妻・綾子が、初めて自分を女として愛し認めてくれたのが秀明なのだから、一気に秀明に依存していっても不思議はない。彼女の過去のトラウマ、消し去れない環境に秘密がありそうではある。

不倫を経て話し合う、それぞれの夫婦


 第6回では、それぞれの夫婦が、思いの丈を話し合う。佐藤家では、太郎(ユースケ)にケガをさせられた秀明が退院してきた晩、真弓が豚しゃぶ鍋を用意している。これは麗奈を出産して退院してきた日に夫が作ってくれた思い出のメニュー。

 それを前に、真弓は娘が産まれたときのことを語り出す。「パパが顔をくしゃくしゃにして娘を抱いたとき、未来が見えた」と。一生、この人と生きていくんだな、幸せだなと思った、と。

 だからこそ、夫の浮気がショックだった、傷ついた。悔しいけど自分が思っているよりずっと夫のことが好きだったと妻は素直に吐露する。


 通常なら、ここでこの夫婦は安泰となるはずなのだが、妻を後ろから抱きしめた夫の手を真弓はふりほどく。

もう遅い。もう無理

 好きだからこそ、もう家族のため、娘のためと自分をごまかすことはできない。自分の気持ちが夫を受け入れることはできなくなっていると、真弓は認めざるを得なかった。

別れよう

 その後、真弓は泣き笑いで「すっきりした」と言う。家庭という「形」を守るため、娘から父親を奪いたくなかったために真弓はがんばってきた。だが、肝心の自分の気持ちを、ここに至って初めて見つめたのだ。

 一般的には、夫に浮気されたとき、裏切られたことに傷つき、怒り、悲しみはしても、最後の最後に「私はまだ夫のことが好きだった」と気づくと、夫の態度にもよるが比較的、元のサヤに収まりやすい。人を騙すことはできても、自分の気持ちを騙し続けることはできないのだ。

 怒りや悲しみが強いうちは、その気持ちが「やり直そう」という意志に勝つのだが、少し時間がたってじっくり自分の心を眺められるようになると、怒りや悲しみより「やっぱり一緒にいたい」と気持ちが動くようになっていくものだ。そしてそうやって元のサヤに収まった夫婦は、雨降って地固まるという結果になっていく。

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従順だった妻、亭主関白夫に痛快な一言

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