狂いそうなブラック研修 「山奥でなぜか穴掘り」でジゴクを見た
4月から転職した人たちも3ヶ月が経過し、そろそろ新天地の良いところだけではなく、ヤバイところも目についているのではないでしょうか?
企業に適した人材を育成すべく、企業側はさまざまな新人研修のプログラムを用意していますが、研修ってけっこう企業カラーが出ますよね。
今回は超ブラック新人研修に参加したというヒロトさん(仮名・34歳)に話を聞いてきました。
「思い出すだけでゾッとしますね」
そう語るヒロトさんは新卒で情報系の会社に入社しました。
「僕が就職活動をしていたころは、氷河期に近い状況で内定率も低かったのですが、その会社は新卒を大量に採用していて疑問に感じたんですよね」
疑問を感じながらもヒロトさんはその会社に入社。翌日から新人研修に参加します。
「いきなり山に連れていかれました。1週間、山の中にある合宿所に泊まるんです。初日に携帯も没収されましたね」
はじめから、すごいブラック感が漂ってきます。
「僕は営業職採用だったのですが、営業メンバーは下山させられて、麓(ふもと)にある駅の改札口に立たされました。そこで自分の短所を大声で叫び続けるんです」
その研修内容には、どのような目的があったのでしょうか。
「『営業マンたるもの恥を捨てろ! 恥ずかしいという気持ちがあって物は売れない!』と人事に言われました。声が小さい! と怒られ、短所の内容が甘い! と怒られ、怒られ続けました」
かなり壮絶な研修風景です。
「ですよね。この研修で数人がリタイアしました。試用期間中に退職です。去る方も残る方も地獄です。心がボキボキに折れながら研修を続けました」
「閉鎖された合宿所の生活で精神的にいろんなことが麻痺していくのがわかりました。最終日には短所を叫ぶのも快感になっていましたね(笑)」
ヒロトさんは続けます。
「『自分の弱みを克服できました!』って泣いている女子もいました。それで、この一連のやりとりをみて『異常だ!』と言ってまた数人がリタイアしていくんです。そこでようやく大量に新卒採用をする理由を理解しました」
耳を疑うような話は続きます。
「合宿所の近くに穴を掘るという課題も出されました。数人のチームで指定の大きさになるように数日かけて穴を掘るんです」
かなり斬新な研修です。
「大きい穴なので、みんなで手分けして必死に掘るんですけど、翌朝、続きを掘りに行くと穴が埋まっているんです。人事が夜の間に埋めていると聞きました。掘っては埋められ、掘っては埋められを数日間繰り返しました」
精神的にも肉体的にもとんでもない徒労感が出そうですが……。
「その研修でも数人が『気が狂いそうだ』といってリタイアしました」
ヒロトさんいわく、このブラック研修を経て残った新卒社員は3分の1もいなかったと言います。ヒロトさんはなぜその3分の1に残れたんでしょうか。
「洗脳と意地ですかね。自分でもよくわかりません」
ヒロトさんは入社して半年後に他企業へ転職し、今にいたります。
「10年以上前の話ですが、いまだに穴を掘る夢をみますね」
まさに社員をむしばむブラック新人研修です。
―シリーズ 会社のヘンな「しきたり」 vol.6―
<文/瀧戸詠未 イラスト/鈴木詩子>
いきなり山奥に連れていかれる
「恥を捨てろ」と怒鳴られ続ける

就職氷河期なのに大量採用のワケに気付く

研修のクライマックス 穴掘り
