その頃から、活動量も減って行きました。あんなに大好きだった引っ張りっこも、お気に入りのおもちゃでのひとり遊びもしなくなり、ほぼ一日中、階段下スペースにある自分の部屋の、いちばん奥で丸まって過ごすようになっていました。
散歩に行くのも嫌がり、呼んでも部屋から出てこないため、リードを付けてだましだまし外に連れ出したものです。

写真はイメージです。
今までとは明らかに違うケフィの状態。
その変化をどう受け止めていいのか、正直、私は迷っていました。獣医師をはじめ、獣医看護師さんやトリマーさん、ペットシッターさんなど何人もの専門家に意見も求めました。みんなさまざまな対処法などのアドバイスをしてくれましたが、行き着くところはみな同じでした。
「
もう老犬なんだから」
散歩に行きたがらないのも、活動が減ったのも、表情が乏しくなったのも、食欲が落ちたのも、仕方の無いことかもしれないと言うのです。
それはもっともな意見でした。けれど私の心の奥底には、自分でも見えない底なし沼のような、どす黒い不安の塊ようなものが漂っていました。
悪くなる一方の皮膚はすっかり毛が抜け落ち、いつしか赤黒く膨らんでしこりのようになり、獣医師も気にしていました。麻酔をかけずにできる範囲の検査では、「
ガンの可能性もあるが正確な検査をしなければ分からない」という結果でした。それ以上、調べるためには全身麻酔をして調べるしかありません。
私は躊躇(ちゅうちょ)しました。なんとなく「今までとは違う」ような感じがしていたのです。急激に元気が無くなってきたケフィの様子も、ただごとではないようにも思えました。でも、
全身麻酔という老犬であるケフィに大きな負担をかけなければ検査ができないこと、そして検査をして何か大きな病気が発見されることを想像すると、どうしても踏み切れませんでした。
だから私は自分にこう言い聞かせ、考えないようにしました。
「
老犬になればみんなこんなもの。何しろゴールデンの平均寿命は超えているんだから」
<文/木附千晶>
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【木附千晶プロフィール】
臨床心理士。IFF CIAP相談室セラピスト。子どもの権利条約日本(CRC日本)『子どもの権利モニター』編集長。
少人数の「ペットロス」セミナーを開催しています(港区東麻布、カウンセリングルーム「IFF」相談室内)。次回は2018年8月4日(土曜日)13時~16時です。