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心が疲れ果てた人へ…医師がオススメ「温泉で幸せホルモンが出ます」

自分ではコントロールしにくいイライラを、温泉で整える

 温泉のリラックス効果は、「自律神経」へのアプローチといった側面からも証明されています。熱い温泉に入ると、最初は交感神経が優位になり興奮したような状態になるのですが、徐々に落ち着いていき、逆に副交感神経が優位になることで、リラックス状態に変化していくのです。  温泉が自律神経に影響する根拠のひとつは、温泉に含まれる“リラックス成分”によるもの。たとえば、カルシウムイオンを多く含む温泉に入れば、イライラを直接的に鎮めてくれることがわかっています。昔からイライラしていると「カルシウムが足りていないのでは?」と言われますが、医学的にも正しいことであり、私も医学部で教わったものです。
草津温泉

草津温泉の湯畑

 カルシウムのほかにも、硝酸ナトリウムなど、戦前からすでに研究で明らかとなっていた鎮静作用をもたらす成分が温泉には多く含まれています。これらの成分が不足している人は、温泉に浸かることでイライラを抑えることができるかもしれません。  脳波や自律神経など、イライラに関連する複数の要因を総合的にケアすることで、心からリラックスできる状態に整えていくといいでしょう。

温泉に入るだけで分泌する「幸せホルモン」

 最後に、温泉に入ることで、直接的に“幸福感”を得られる具体的なメカニズムを説明しましょう。温泉に浸かることで幸福度が高まることは、温泉療法専門医である早坂信哉先生により、6000人を対象に2012年11月から12月にかけて行われた大規模調査などによっても明らかとなっています。 温泉・夜 これは、温泉に首まで浸かって温まると、幸福感を高める2種類のホルモンが分泌されることによるものと考えられます。ひとつは、「なんだか気分が落ち込む」「元気が出ない」といった、いわゆる「うつ状態」を改善する「セロトニン」。セロトニンには、精神を安定させる効果が期待できます。  加えて、温泉で得られる「オキシトシン」と呼ばれるホルモンには、ストレスを緩和し、幸せな気分をもたらす効果があるとされています。最近はオキシトシンがある種ブームになっていて、マザーズタッチのように触れることでオキシトシンを出すといったマッサージもあるようです。  オキシトシンが活発に分泌される代表的な場面は、「子どもに愛情を注ぐ瞬間」とされています。赤ちゃんを愛おしいと思い、守りたいと考えるのも、オキシトシンの分泌が影響しているのです。  したがって、子どもがいない方や、いたとしても反抗期を迎えるなどして関係が悪化してしまうと、愛情を注ぐべき対象がなくなるためオキシトシンを十分に分泌できなくなってしまうようですが、オキシトシンは、温泉に入るだけで簡単に分泌させることができます。  以上、ご紹介したように、温泉には、リラックスして日頃溜め込んだストレスなど、いわば“心の毒”を解消するとともに、幸福感を得られるという、ほかでは得られない特徴があります。仕事など日常生活で疲労やストレスを感じる方は、ぜひとも温泉を利用してみてください。 最強の温泉習慣
一石英一郎氏

一石英一郎氏(撮影/林紘輝)

【一石英一郎先生プロフィール】 1965年、兵庫県生まれ。医学博士。国際医療福祉大学病院内科学教授。日本内科学会の指導医として医療現場の最前線を牽引する一方、伝統医療と西洋医療との知見の融合にも造詣が深い。温泉入浴指導員の資格も有するなど、温泉を活用した健康増進にも精通する。著書に『医者が教える最強の温泉習慣』 <文/一石英一郎>
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医者が教える最強の温泉習慣

動脈硬化、糖尿病、高血圧、がん、うつ、慢性疲労、肩こり、不眠etc.。温泉が持つ驚異的な健康効果をエビデンスに基づき医学博士である著者が解説

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