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恋人が2人、だけど不倫でも浮気でもない。「ポリアモリー」という生き方

愛情が深いからこそ、複数の人を同時に愛せる

 私自身はモノガミーなので、本書を読んですべてを理解するのは限界がありました。共感する部分もあれば、困惑や嫌悪など、複雑に感じる部分も当然あるのです。 愛情 だって、同棲している恋人1に「今日、恋人2とデートしてくるね」と告げて外出し、恋人2に「今夜は恋人1とレイトショーを観るから、帰るね」と別れる、といった生活です。ちょっとうらやましい気もしますが、砂上の幸せかもしれない、と首を傾げたくなるのです。だからこそ、いろいろな覚悟が必要となってくるのですが。  それでも私は、きのコさんが言う、「ポリアモリーは愛情が深い人たちであろうことは確か」という意見にうなずきました。なぜなら、数人いる恋人たちと分け隔(へだ)てなくコミュニケーションをとり、性的関係をむすび、相手も自分も大切にするといった付き合いは、愛情が深くなければ到底できないからです。  私など、たった1人の恋人または夫でも悩みは尽きないし、相手にエゴをぶつけてしまいます。おそらくほとんどの女性がそうだろうし、「1人の人を永遠に愛する」といった風潮が(たとえそれが無理難題だとしても)、まだまだ日本の美学としてまかり通っているのではないでしょうか。  私は、1人の人を永遠に愛するのがつまらないと言っているのではありません。たくさんの人と付き合って平等に愛情をそそぎましょう、と先導しているのとも違います。しかし、ポリアモリーという生き方を公表したきのコさんの潔さ、生き方、愛し方には、学ぶべきことがあるのではないでしょうか。  世の中には、世間一般に見て「あまり普通ではない人達」が存在します。でも、普通っていったい何? 自分の人生に責任を持ち、他人に迷惑をかけず、愛を持って生きれば、何でもありではないかと。  本書を読み終えた時、ついそんな風に、「一般的じゃないかもしれないけれど、正しいかもしれないこと」を思ってしまったのです。 ―小説家・森美樹のブックレビュー― <文/森美樹> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
森美樹
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。X:@morimikixxx
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