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過激すぎるベッドシーンに俳優が降板。仏の名匠に舞台裏を直撃|『2重螺旋の恋人』

 ひとつのジャンルにこだわらず、詩情豊かな映像と練られたプロットで私たちを魅了する鬼才フランソワ・オゾン。芸術性に優れているだけではなくエンターテインメント性も高く、日本でも新作がほぼ毎年公開される数少ないフランス人映画監督です。

フランソワ・オゾン監督

フランソワ・オゾン監督/撮影:岸本絢 

 そんなオゾン監督の話題作『2重螺旋の恋人』(8月4日公開)は、双子の兄弟と恋に落ちる女性を巡る謎を追いながら、人間のもつ潜在的願望をあぶりだすセクシーで危険なミステリー。来日したフランソワ・オゾン監督に、映画の制作秘話や女性のセクシュアリティについて質問しました。



衝撃のラストに息をのむ『2重螺旋の恋人』あらすじ


 謎の腹痛をいつも抱えているクロエ(マリーヌ・ヴァクト)。肉体的にはなにも問題がないはずだと医師に言われ、医師の勧めで精神分析医ポール(ジェレミー・レニエ)を訪れます。ポールとのセラピーで回復に向かうクロエは彼と恋に落ち、やがて2人は一緒に暮らし始めます。
 ところが、ある日、ポールとそっくりの男を発見。なんと、彼はポールの双子の兄ルイ(ジェレミー・レニエの1人2役)で、ポールと同じく精神分析医だというのです。しかし、なぜかポールは双子の存在をひた隠しにしている様子。ポールの秘密を探るためにルイに近づくクロエは、やがてルイとも体を重ねるように……。クロエはどこへ向かうのか。そして、ポールとルイの秘密とは……?

双子を通して表現したかったもの


『2重螺旋の恋人』より

『2重螺旋の恋人』より

――双子を題材にした理由は?

フランソワ・オゾン監督(以下、オゾン監督):以前から私自身、双子の兄弟がいたらよいなと思っていて、“双子”というテーマに興味をもっていました。本作はジョイス・キャロル・オーツというアメリカ人の作家による短編を映画化したものですが、実は、この作家自身もジョイス・キャロル・オーツ、そしてロザムンド・スミスという2つのペンネームをもっているんです。2つのアイデンティティをもつ作家が“双子”というテーマを掘り下げた。これはもう絶対に映画化したいと思ったんです

――双子というテーマを通して、ひとりの女性がもつ“2面性”を映し出しているのでしょうか?

オゾン監督:このミステリーは、クロエが自分自身の謎を問こうとするなかで、自分の無意識を探求し、自己発見をしていく物語です。映画を観る皆さんもクロエの無意識の世界に入り込んでほしい。

 クロエが働く美術館のアート作品は、すべて彼女の無意識を反映していて、この映画のために創ったオリジナルなんです。そもそも、双子そのものが、自然界における“芸術”だと私は思っています。同じ体をもつ人間が2人いるなんて、奇跡としか言いようがない。

 クロエが美術館でアートを見るとき、彼女は実は自分の内面と向き合っています。つまり、意識と無意識が対峙している。クロエが美術館で働くという設定は原作にはないんですが、意識と無意識の対峙を映像にしたかったんです。

問いかける映画監督でありたい


『2重螺旋の恋人』より

『2重螺旋の恋人』より

――クロエが受ける精神分析のセラピーでは、鏡やインテリアの相対的な構図にも、“意識と無意識の対峙”が表れているように思いました。

オゾン監督:美術館にも、鏡、鏡の反射、2重螺旋の階段など、本作の美術は全部登場人物の無意識を表現しているんです。果たしてクロエはどうなるのか……それは皆さんが決めることだと思っています。

 観客には自由に解釈して、映画を観た後もその余韻に浸ってほしい。私は作品を通して“問いかける”種類の映画監督でありたいと思っています。映画ですべての答えを語ってしまうんだったら、映画監督ではなくて政治家になればいいわけだし(笑)。あなたは最後にクロエがどうなると思いましたか?

『2重螺旋の恋人』より

『2重螺旋の恋人』より

――2回観たのですが、クロエの腹痛の謎は解けましたが、また新たな謎を発見したような……。

オゾン監督:そう、だったら、4回観たら分かりますよ(笑)。4回観ようって皆さんに伝えて下さい。映画をヒットさせましょう(笑)。

過激すぎるセックスシーンに俳優が降板


『2重螺旋の恋人』より

『2重螺旋の恋人』より

――クロエがディルドを使ってポールとセックスするシーンは衝撃的でしたが、女性はこういった欲望を潜在的に感じているのかもしれません。

オゾン監督:ディルドのセックスシーンは原作にもないし、最初はシナリオにもなかったんです。でも、双子について興味深い事実を発見したんですよ。双子の間でなにか葛藤が起こるとき、一人は“主”になり、もう一人は“従”になるという主従関係ができるらしいんです。“支配と従属の関係”を男女のセックスで描きたくて、ディルドのシーンを盛り込みました。それに、私たちには多かれ少なかれ、無意識下に暴力的な側面もあるのではないでしょうか?

 実は、ポールとルイの役は、別の有名なフランス人俳優が起用されていました。でも、ディルドのシーンが追加されると、「恋人や家族の手前、こんなシーンを演じることはできない」と降板してしまったんです。プロデューサーは残念がっていましたが、私は長年知っているジェレミー・レニエに演じてもらって嬉しかったですね。まぁ、フランス人男性は結構マッチョなところがあるから(笑)。ジェレミーはベルギー人だし。

 ところで、日本人の俳優だったらこういう役も引き受けてくれると思います? この後、池松壮亮さんと対談するから聞いてみようかな(笑)

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フランス人より日本人の方が愛と性を分けている!?

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『2重螺旋(らせん)の恋人』は8月4日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開 配給:キノフィルムズ




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