「クマのプーさん」の利益を受け取らなかったクリストファー
1996年に没したクリストファーは
「クマのプーさん」シリーズの莫大な印税は受け取らず、妻と2人自力で本屋を経営したのだとか。父ミルンが亡くなった数ヶ月後に重度の障害を患う娘クレアが生まれてからは、父の遺産はクレアのために使われ、2012年にクレアが亡くなった後は、身体障害者支援のために委託されました。
意図的ではなかったにせよ、
息子から“子ども時代”を奪ってしまった父と、世間や父が期待する理想のクリストファー・ロビンになれなかった息子。実在のミルンとクリストファーの関係は、『プーと大人になった僕』のクリストファー・ロビンと娘マデリンに重ねられています。
マーク・フォスター監督は本作への想いをこう語りました。
「人生はあっという間に過ぎてしまうものですが、この映画が自分の生活に目を向けて、自分の時間の過ごし方、誰とその時間を過ごすのかを見直すきっかけになることを願っています」(※3)
本作は、空を見上げることすら忘れてしまった大人への優しいメッセージなのです。
【参考】
※1…国書刊行会 『グッバイ・クリストファー・ロビン』アン・スウェイト著 山内玲子・田中美保子訳
※2…岩波書店『クマのプーさんと魔法の森』C.ミルン著 石井桃子訳
※3…『プーと大人になった僕』映画プレスリリース
<文/此花さくや>
⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
(C)2018 Disney Enterprises, Inc. All rights reserved
此花わか
映画ジャーナリスト、セクシュアリティ・ジャーナリスト、米ACS認定セックス・エデュケーター。手がけた取材にライアン・ゴズリング、ヒュー・ジャックマン、エディ・レッドメイン、ギレルモ・デル・トロ監督、アン・リー監督など多数。セックス・ポジティブな社会を目指してニュースレター「
此花わかのセックスと映画の話」を発信中。墨描きとしても活動中。twitter:
@sakuya_kono