結婚は夫婦でつくる「幻想」なのかもしれない|映画『かごの中の瞳』
カナダの心理学者リーが、4,000もの恋愛に関する文献からの記述を心理学者や哲学者と研究し、さらにカナダやイギリスの青年112人に行った調査から、恋愛には6つのパターンがあるという理論を打ち出しました。
遊びの愛(ルダス)、実利的な愛(プラグマ)、友愛的な愛(ストーゲイ)、美への愛(エロス)、狂気的な愛(マニア)、愛他的な愛(アガペ)というもの。このなかで「愛他的な愛」というのが、嫉妬をしないで相手を思いやり、見返りを求めない愛だそう。なんと、リーはこの研究から「愛他的な愛」に当てはまる人を実際に見つけることができなかったのだとか! 「愛他的な愛」は映画や文学などフィクションの世界にしか存在しないというのが彼の結論でした。(※2)
「女性の自立」「性の目覚め」「結婚の現実」といった普遍的なテーマを、“盲目の視覚”で表現した画期的な本作。希少なヴィンテージレンズで撮影した映像を切り取り再構築した映像は、流れるような万華鏡のようにもシュールレアリズムの絵画ようにも見えます。
また、ただストーリーを追うだけではなく、“鳥”を始め作品のなかに潜む様々なメタファーを考えてみるのもおもしろいでしょう。
複雑な家庭環境に育ったというマーク・フォースター監督は海外映画サイト「COLLIDER」のインタビューでこう語りました。
「この作品は、人と人との結びつきの裏側にあるものを露わにしたもの。人が言葉にはしないもの、人と人の関係性に潜んでいるもの――そういったものを深く描きました」(※3)
幻想が崩壊したとき、人はどうするのか。私たちが恋に、結婚に“盲目”でいられるのは永遠ではないのです。
【参考】
※1…Blake Lively Opens Up about the “Most Intense Film” of Her Career – Vanity Fair
※2…サイエンス社「恋ごころの科学」松井豊著
※3…Marc Forster on His Visually-Driven Psychological Drama ‘All I See Is You’ – COLLIDER
<文/此花さくや>
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此花わか
ジェンダー・社会・文化を取材し、英語と日本語で発信するジャーナリスト。ヒュー・ジャックマンや山崎直子氏など、ハリウッドスターから宇宙飛行士まで様々な方面で活躍する人々のインタビューを手掛ける。X(旧twitter):@sakuya_kono
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『かごの中の瞳』は9月28日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他にて全国公開
配給:キノフィルムズ/木下グループ
配給:キノフィルムズ/木下グループ




