――また、最近はセクハラや性暴力が今まで以上に問題になっています。好きな人に対しての「口説き」と区別がつかずどうすればいいかわからない、と困惑している人も多いのではないでしょうか。
里子「よく男性から、『女性は嫌ならそう言えばいい』と言われることがあります。
でもちょっと考えてみてください。例えば、密室に2人っきりになったとします。もし押し倒されたら非力な女性であれば抵抗できません。押し返す力があったとしても、抵抗して殺されてしまった女性のニュースが頭をよぎり、何もできないこともあります。
相手が上司だったら、嫌だな、おかしいなと思っても、空気を読んでニコニコするしかないかもしれません。相手が友だちの場合、だからこそ怒らせたら友人関係の輪がどうなるか、怒らせたら何をされるか分からない恐怖もあります。
そういった理由で強く否定できないからといって、相手を受け入れたことにはならないんです。肉体的な力や構造的な力を持つ人たちは『自分はパワーを持っている』『社会が女性の抵抗する力を奪っている』という前提をまず認識して欲しいですね」
KIKI「強く断れない気持ちは、弱者の立場になるとよく分かります。反発すると、『
お前なんかに欲情しねえよ、ブス!』などと言い返されることもあります。『もしかしたら自分の勘違いかな?』と思うと、言えなかったりもします。
決して被害にあった人が黙っているのが悪いのではありません。解決への手助けになるのはフェミニズムを知ることです」

里子「女性は、男性からよく『女は性の話をするべきじゃない』と言われます。でも、そうして黙らされている立場の人は、性的な誘いを受けたときに『おかしい』『いやだ』と思ってもなかなか否定できません。抵抗の言葉や仕草を奪われている状況があるのに『否定しなかったからOKだと思った』と言われて、一生心に傷を負うようなセクハラを受けるかもしれません。
そうしてその場で否定できないことから、あとから『あれはセクハラだった』と訴えざるを得なくなってしまう。
確認するべきは、同意が得られているかどうかです。それを知れば、『そんなつもりはなかった』という言い訳が多いのは、『同意』とは何かを知ろうとしなかった結果だと思います」
KIKI「女性が自分の権利を主張し、フェミニストが声をあげることは、
男性にとって『曖昧で解らないこと』が減っていきます。確認作業をすれば誰もが気持ちよく過ごせるようになるんです。
すべての人間が平等になることは、
自分が得られるべき権利を損なうことではなく、自分の利益にもつながります。それはとても大切なことです」
<文/和久井香菜子 撮影/林紘輝>
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