Vol.7-1「女性をモノ扱いですね」憧れの女性と結婚した男性がとったまさかの行動
【ぼくたちの離婚 Vol.7 欲しいものだけ、欲しい #1】
「大学に入学してすぐ広告研究会に入ったんですが、そこで2年生だった1つ歳上の女性に一目惚れしました。それがのちの妻、大島ミドリ(仮名、当時19歳)です」
グラフィックデザイナー、アートディレクター(AD)の滝田浩次さん(仮名/年齢非公表、50代)は、若い頃の坂本龍一を彷彿とさせる白髪交じりのツーブロックに、整えられたおしゃれヒゲ。しかし嫌味で傲慢な印象はない。
滝田さんの主な仕事は、企業や商品のロゴデザインをはじめとしたCI、新商品のパッケージデザインコンセプト立案、企業のサイト制作など。手がけた企業名や商品名を聞いてみてビックリした。いずれも知名度の高いものばかり。そう、滝田さんは業界内では知る人ぞ知る売れっ子ADなのだ。
滝田さんは1980年代後半に都内の美大を卒業後、印刷物を中心としたデザイナーとして数年活動したあと事務所を立ち上げた。現在は港区の仕事場にスタッフ5人を抱えている。
「ミドリは色白で小柄の、ありえないくらい美しい女性でした。ただ、いわゆる雰囲気美人で、写真だけ見てもたぶん伝わりません。家は成城、親は医者で大学教授。本人はラカン(ポスト構造主義に影響を与えたフランスの哲学者・精神分析家)を読み、ディープなシネフィル(映画狂い)。お嬢様なのにインテリ、金持ちというよりは高貴。近くで匂いをかげるだけでも幸せでした」
ただミドリさんは、在学中からデザイン関連の賞をとりまくっていた3年の先輩と交際しており、サークルでも公然のカップルだった。
「だから僕は、ミドリと横顔が似ている同級生のA子と付き合い始めました」
ネタかと思ったが、そうではないらしい。「後から思い返せば」といった注釈付きでもない。滝田さんは最初から自覚的に「ミドリさんと横顔が似ているA子さん」を彼女にした。
「セックスの時も、A子の顔を見てミドリを想像していました。当時から、女性を人として見ていなかったんです。本当に最低ですね。A子とは当然長続きするはずもなく、卒業前に別れました」
デザイン事務所に入って働き始めた滝田さんは、ボスのお供でついていった企画会社との飲み会で、新人プランナーのB子さんと出会い、つきあい始める。
「B子はミドリほどの圧倒的な女性ではありませんでしたが、映画や音楽の趣味はぴったりだし、性格も合っていました。周囲にも僕らがつきあっていることは知られていて、いずれ結婚するだろうと思われていましたね。ミドリのことはずっと頭にありましたが、卒業後は音信不通でしたし、ああ、このままB子と結婚するんだろうなと考えていました」
ところがB子さんと付き合って3年ほど経過したところで、運命の歯車が動き出す。