Vol.7-2 妻子を捨てて「最高の女」と結ばれるはずが…「牛で全部ひっくり返った」
言語化できない不快感
滝田さんはついに最後まで「無理」以上に説明してはくれなかった。インタビューを終える間際に発された滝田さんの言葉が思い出される。
「聡子と出会ってからの7年が、牛で全部ひっくり返りました。聡子の実家と血縁関係になるのは無理です。聡子のルーツを完全否定した僕は、人間として最低です」
名状しがたい、すべてを台無しにする不快。理屈や倫理では組み伏せられない、極めて主観的な不快。“それ”と自分がつながっていると思うだけで、悪寒が走るほどの圧倒的な不快。心の深淵に鎮座する、どす黒い違和感。滝田さんは齢50に近づいてはじめて、自分の内にある“名前のない怪物”に気づいたのだろうか。
滝田さんは現在も独身。毎月、莫大な額の養育費を支払っている。
※本連載が2019年11月に角川新書『ぼくたちの離婚』として書籍化!書籍にはウェブ版にないエピソードのほか、メンヘラ妻に苦しめれた男性2人の“地獄対談”も収録されています。男性13人の離婚のカタチから、2010年代の結婚が見えてくる――。
<文/稲田豊史 イラスト/大橋裕之 取材協力/バツイチ会>
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編集者/ライター。1974年生まれ。映画配給会社、出版社を経て2013年よりフリーランス。著書に『映画を早送りで観る人たち』(光文社新書)、『オトメゴコロスタディーズ』(サイゾー)『ぼくたちの離婚』(角川新書)、コミック『ぼくたちの離婚1~2』(漫画:雨群、集英社)(漫画:雨群、集英社)、『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)がある。【WEB】inadatoyoshi.com 【Twitter】@Yutaka_Kasuga


