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乙女の胸を突き刺す不思議な愛の物語『薔薇を脱ぐ』 の著者が語る「呪いとしての愛」とは?

愛の着心地は自分で決めるもの

「女性の社会進出が進んで、女も稼げる、ひとりでいても幸せに世界と関わって暮らせることがわかっているのに、まだ『男に愛されないとヤバい』と思わされている……思っているんじゃなくて、思わされているんだと思います。『愛されないとヤバイ』『選ばれなければ不幸せ』『女の幸せはこう』という一種の『愛』から解放されるために創ったのがこの本です」 ――サッと読んだだけでは意味がわからなくても、なんども読み返していくうちに血肉になってしみ通っていくだろうと思わせる作品でした。 「女の子たちがこれまで受けてきた苦痛を和らげたり、これから受けるであろう苦痛に対して予防接種をしておきたいんです。誰かに選ばれないといけない、美しくなければ意味がないといった呪いを解きたい。誰かに認められることや『ここで認められなければダメだ』と、用意された場所で認められることだけが人生ではないことを訴えたいんです。自分で、受け入れる愛と受け入れない愛を選んで、好きに着たり、着なかったりすることができると提示したい」 majoccoさん3

読んでくれた女性たちが紡ぐ物語を見てみたい

「『女の子は数学が苦手だし』 『女の子はそんなに頑張らなくてもいいの』 『力仕事は男の役割』  こういう、思いやりや愛の姿を借りた『呪い』って、結構嘘だと思っています。 『家事ができること』や『美しくあること』が女の、自分の価値だと思いこんで育ってしまった人って、割と多いように思うんです。そうではなくて、自分で『自分の価値はこうだ』と思えるように生きて欲しいです。『自分は何が好きで、何が得意で、何ができるの?』ってところにたどり着いて欲しい」 ――そうした思いを、絵本という形にしたのは何故なのでしょう? 「物語、特に絵本は『パッと見てダイレクトに言いたいことが伝わって面白い』というよりは、じわじわと身体の中に入り込んでいくこと、時間をかけて咀嚼することができる媒体だと思っています。いろんな年代の女性たちに読んでもらって、読んだ女性たちが何を思うのか、思い出すのか知りたい。読んだ後に、Twitterなら5つくらいのツイートを使って、自分の話を展開してくださることが理想です。今までどう生きてきたのか、これらの物語に共感できるのか、できないのか。みなさんの物語が、どう紡がれてきて、どう紡がれていくのか。それが知りたいです」
額装

絵本の一部を額装してみた。いつでも目に入る場所に飾っておきたい美しさです

 作者のmajoccoさんは、ファンタジックな世界にかなり計算されたメッセージを込めていました。  繰り返し読むことで、知らず知らずに他人から与えられていた呪いを解くことができるのかもしれません。 <文/和久井香菜子> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
和久井香菜子
ライター・編集、少女マンガ研究家。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。英語テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。視覚障害者によるテープ起こし事業「合同会社ブラインドライターズ」代表
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