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『黄昏流星群』せつない最終回を振り返る。佐々木蔵之介と中山美穂の夫婦はどうなった?

亀山早苗の不倫時評――ドラマ『黄昏流星群』の巻 vol.10>  ふたご座流星群が流れ落ちる中、ドラマ『黄昏流星群~人生折り返し、恋をした~』(フジテレビ系、木曜夜10時~)が最終回を迎えた。  銀行に戻った完治(佐々木蔵之介)が華々しい活躍をし、妻の真璃子(中山美穂)は夫に心を寄せて励まし、不倫相手だった栞(黒木瞳)は小さな港町で遺伝性糖尿病と闘う日々。  元サヤかと思ったそのとき、完治と真璃子は心のみならず体も重ね合う。おそらく久々の関係だろう。そして翌朝、真璃子は夫に離婚届を差し出す。 「あなたの心の中に別の人が棲みついているのがわかった」 と言いながら。  抱き合うと相手の心の中が透けて見えてしまう。これこそ、長年の夫婦ならではの証であり、心を寄せ合った証拠でもあるのだが、相手の心の中に自分がいないことを肉体を通して感じるほどせつないものはない。真璃子が離婚届を差し出すのも無理はないが、長年、家庭だけで生きてきた真璃子を外の世界にジャンプアップさせたものが何だったのか、いまひとつ伝わってはこなかった。  不倫ドラマの最後は、だいたい一般的な“良識”に基づいてご都合主義で終わるものだが、そういう意味では、妻の真璃子が自立することで完治が自由になり、栞の職場で少しおせっかいな女性がいたことで、完治はようやく栞と再会できたという終幕だから、オンナの自立こそが男に幸せをもたらすという構図。そして無欲な女が愛する人と添うことができるという結末か。  それにしても、この完治という男性はどれだけのお金をもっていたのだろう。どうやら自宅は妻に渡したようだが、50歳にして家のローンは完済していたのだろうか、元妻・真璃子は人を雇うような立派なパン屋さんを誰のお金で開業できたのか。完治が栞と開いた山あいのカフェは退職金でまかなったようだから、家のローンとパン屋さん資金が謎ではある。店は開業資金のみならず運転資金もいる。金の流ればかりが気になってしまった。  というのも、以前、40代後半の主婦たちに話を聞いたとき、「3億円あったら何をするか」という問いに、全員が「離婚する」と答えたからだ。つまり、主婦たちを結婚生活に縛りつけている大きな要因は、経済的な問題なのである。お金さえあれば、誰だって自由がほしいと彼女たちは異口同音に言った。だからこそ、真璃子のパン屋さんの開業資金が気になる。普通の主婦だった真璃子が、いきなりあんな立派な店を経営していけるものだろうか。  今まで心理的にはそこそこリアルだったドラマが、急に夢物語として離れていってしまった……そんなもの悲しさにとらわれた。
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家を飛び出していくオンナたち
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