一般的には、今の生活を維持したい、だから離婚できないと言う女性が多い。しかし、実際には
経済的な見通しがなくても結婚生活から飛び出していく女たちはいる。30年の結婚生活に別れを告げて家を出たのはコズエさん(55歳)だ。
横暴だった夫から渡されるぎりぎりの生活費からこつこつ貯め、子どもが大きくなってからはパートで働いた。その
全財産500万円をもって5年前に家を出たのだ。ひとり息子に保証人になってもらってアパートを借りた。

そこからはパートをかけ持ちしながらひとりで生活しているが、「
こんな自由を味わったのは生まれて初めて」と笑う。職場で昼も夜もまかないがあるから食費もかからない。毎日10時間くらい働いて、ときどき友人と飲みに行く。生まれて初めてパチンコもやったし競馬もやった。
実は彼女は裕福な家のひとり娘で、夫の社会的地位も高かった。だがそんな
「虚飾」を振り捨てた今が、いちばん幸せなのだという。
「離婚した時点で実家とも縁を切られたけど、だからこそ天涯孤独の自由がある。そういう生き方があってもいいんじゃない?」
とことん“自由”な生き方こそ、彼女が求めていたものなのだろう。なかなかそこまで吹っ切れる人は少ないが、彼女は50年以上、自由ではなかったのだということでもある。

写真はイメージです
ドラマのように自由になれて、自分のやりたいことができて、なおかつ寄り添う人がいる。そんなふうに何もかも手に入ることは現実ではめったにないだろう。ただ、自分の覚悟さえあれば、コズエさんのように楽しく生きていくことはできるのだ。
「
孤独死は怖くないかとときどき人に聞かれるけど、孤独死上等って答えてる(笑)」
ここまで言えたら、人生、勝ち組なのかもしれない。
<文/亀山早苗>
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