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親に性的虐待された内田春菊が語る「被害女性を叩く人たちの頭の中」

内田春菊さんインタビュー Vol.3―  実母との歪んだ関係や、母親の協力の下でおこなわれた養父からの性的虐待などを綴(つづ)った『ファザーファッカー』(文藝春秋)の刊行から25年の時を経て、昨年11月、母親目線で当時を振り返った『ダンシング・マザー』(同)を発表した内田春菊さん。
『ダンシング・マザー』(著:内田 春菊、出版社:文藝春秋)

『ダンシング・マザー』(著:内田 春菊、出版社:文藝春秋)

 これまで2回に渡り、執筆秘話や母親との関係当時の体験が及ぼした影響などについて聞いてきました。3回目となる今回は、社会にはびこる女性の性的問題にも触れていきます。

「女のほうに隙があるからだ」と言いたがる人たち

――作品の中で「何度か痴漢に遭い、その度に、される側に原因があるかのように怒られた」との描写がありました。当時(約40年前)と今で、性的被害者に対する世間の対応などは変わったと感じますか? 内田春菊さん(以下、内田)「母はとにかく私のことを『男に色目を使っているやらしい子』と言い続けていたので、痴漢に遭うのもそのせいだと思っていたのでしょう。でも、痴漢被害に遭ったのに、『お前に隙があるからだ』みたいにあべこべに怒られる娘さんって、私のほかにも結構いるみたいですね。電車内やホームなんかを見ても、『痴漢は犯罪です』って、男性をいさめる意味合いのポスターばかりが貼られていますし、まだまだ被害に遭った人の側に立つ世の中にはなっていないんだなと感じます。酷いですね」
内田春菊さん

『ファザーファッカー』『ダンシング・マザー』の著者、内田春菊さん

――セクハラなどの被害に遭った女性が声を上げる「#MeToo」も注目されましたが、やはり声を上げた女性に対し、似たような声が少なからず向けられていました。 内田「少し前に、セクハラなどの加害者がそれを恋と思い込んでいたら、圧倒的な力関係の下でも恋愛は成立するのか? 好意だったら許されるの? とのテーマで、『#MeTooって恋愛なの?』という読書会をしたんですね。そこで、『ファザーファッカー』とともに、ガルシア・マルケスの『エレンディラ』という、祖母に娼婦にされた14歳の少女の物語を取り上げたのですが、その中に、おばあちゃんが『恋は大事だよ』という掛け声で客を取るシーンがあるんですよ。 『売春を恋って言っとるわ!』と思うのですが、実際に娼婦を買う男性って、お金は出すけど恋愛だと思っている人は多いと思うんですよね。ホステスにしても、疑似恋愛を売る仕事ですし。ただ、お金も出していないのに『女たちは俺をいたわってくれて当たり前』と思っている男性もいっぱいいて、それは本当に困ったもんだと思います。でも、まだまだ空気の中にはそういう成分がいっぱいあるんですよね」
セクハラ被害

写真はイメージです(以下同じ)

――男性優位の空気感が根強いことで、被害者が「自分にも非がある」などと責められたり、嫌がらせをされたりする、いわゆる「セカンドハラスメント」を受けて、つらい思いをしている女性も多いと聞きます。 内田「セクハラって、『仕事がほしくてそんなことしたんでしょ』なんて言われちゃうくらい力関係とも密着しているから、難しいですよね。実際に仕事欲しさで体を売る人も全くいないわけではないし。でも、そういうのってどうなんだろう? 私も昔、編集者に誘われたりとかいろいろありましたけど、『この人に仕事をもらいたい』と思う相手だったら、誘いに乗ったのかな? ……わかんないなぁ、今となっては。  それに、そもそもそういう行為が本当に実を結ぶのかも、わからないですよね。まぁ、ご自身の意思なら、男の人にお金を払ってもらったり可愛がってもらったりするために何をアピールしてもいいけれど、子どもは別枠にして、自分ひとりでやってほしいですね。付き合わされる子どもは大変なんですから」
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被害者の内田さんが叩かれた体験
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