まずほとんどのワクチンは、その感染症にかかることを防ぐ「感染予防効果」が大事です。
麻疹(はしか)、風疹(三日ばしか)、ムンプス(おたふく風邪)…などはそれぞれの病気を起こすウイルスに感染することを防いでくれますね。
B型肝炎ウイルスワクチンは、最近になって定期接種となったワクチンですが、これは肝臓に炎症が起こる肝炎という病気を防ぎます。肝炎が長く続くと肝癌になることがありますので、癌を防ぐ効果もあるワクチンとも言えます。
ヒトパピローマウイルスワクチン(HPVワクチン、いわゆる子宮頸がんワクチン)は、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスのうち、癌を起こすことのあるタイプのウイルスの感染を防ぎます。このウイルスによっておこる癌には、子宮頸癌、中咽頭癌、肛門癌、陰茎癌などがあります。ウイルスの感染を防ぐことで、結果的に癌の発症を防ぐことができます。
BCGは結核のワクチンですが、これは子どもの結核の重症化を予防する効果が主なものになります。感染も防ぐことができますが、その効果はやや弱いものです。
インフルエンザワクチンは先に述べたように、感染予防効果がやや低いのですが、重症化することを防いでくれます。インフルエンザによって脳に障害がおこるインフルエンザ脳症は、ワクチンを打っていない人により多く起こることが分かっています。
7.インフルエンザで病院に行かずに治すのはいけないこと?
普段から健康な人であれば、インフルエンザが疑われる発熱、鼻水、咳などがあるときには、家で栄養をとってゆっくり休養してもらうことが一番です。その理由は、たとえインフルエンザ治療薬を飲んでも、発熱している時間が短くなるという効果がほとんどであること、出歩くことで他の人にうつす可能性があることからです。持病がある方や65歳以上の高齢者などの場合は受診して診療をうけることが大切ですね。
8.薬を飲むと抗体ができにくいとか、ワクチンでできる抗体は弱いというのは本当?
インフルエンザに対する薬である抗インフルエンザ薬を使用すると、抗体がつくられにくくなるというデータはあります。しかし実は、感染して抗体ができても、インフルエンザには多数の型があることや長く抗体が作られない特徴があるために次のシーズンにまた感染することもあるのです。
先に述べたようにインフルエンザの場合には予防効果は決してとても高いわけではないのですが、集団で接種していると感染の広がりを防げますので、ワクチンを打って予防するのがよりよいといえますね。
一般にワクチンでできる抗体は、自然に感染した場合より長く作られ続けないことがありますし、反応自体も感染症よりは弱いので数回打たないといけないことが多いのですね。しかし、感染症にかかるとそれ自体が重症であったり、合併症がでたり、死亡することもありますので、ワクチンで抗体をつけることの方がよいことになりますね。
<取材・文/和久井香菜子>
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