ところが、意を決して尋ねた担当獣医師の答えは、びっくりするものでした。
「
行きましょう!! 大丈夫です、行けますよ!」

写真はイメージです
「家でじっとしていても病状が悪化するときは、します。それを恐れて家に閉じこもっていたら、ご家族が参ってしまう。それはケフィちゃんにとってもよくありません。
ケフィちゃんは家族との旅行が大好きだし、ご家族もそれを楽しんできました。だったらできるだけ今までと同じように生活するほうが、みんなにとって幸せなはずです」(担当獣医師)
その言葉に励まされはしたものの、おっかなびっくりの小旅行。元気なときのケフィは、犬用シートベルトを引きちぎらんばかりの勢いで後部座席を行き来し、窓から顔を出そうと乗り出したり、息を弾ませたりしていました。でもこの日は、車中でも、宿に着いてからも、横たわっているだけ。「
やっぱり、無理させたのかも……」と、思って過ごした夜のことです。
家族で夕飯を食べていると、ケフィがおもむろに立ち上がり、テーブルの側まで寄ってきました。そして、首をかしげながら人の間を行き来し、「なに食べてるの?」「おいしい?」「ケフィにもちょうだい」と、
尻尾をぶんぶんと振り出し、ご飯を食べ始めたのです。
そして翌朝。前日まではトイレに連れ出すのも一苦労だったケフィが、自ら宿の庭へ出て行き、草の臭いをかぎ、海からの風を味わうように鼻をひくひくさせて小走りに走り出しました。驚いたことに、
庭の草に体をこすりつけ、土の香りを楽しむように、「ごろん、ごろん」と砂浴びを始めたです。何ヶ月ぶりかの、元気なケフィの姿でした。

元気なケフィの姿
「ケフィが、『ごろん、ごろん』してる!!」
私は小躍りしてカメラをかまえました。「
こんなに元気な、楽しそうなケフィにまた会えるなんて!」と、目頭が熱くなりました。