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86歳で大人気のカリスマ女性。性差別と戦った半生とは

男性への性差別にも挑んだルース・ギンズバーグ

『RBG 最強の85歳』より

『RBG 最強の85才』より

――1960年代初頭から「女性の権利プロジェクト」の立ち上げに関わり、顧問弁護士として最高裁で様々な性差別の訴訟に勝ったルースですが、“女性が性差別を受けている”という訴訟だけではなく、“男性も性差別を受けている”という訴訟も起こしていたことに驚きました。 コーエン監督「ルースは頭脳明晰で非常に戦略的な弁護士でした。男性優位社会で女性差別をなくすには、男性を味方につける必要もあったんです。なので、男性も性差別されているという訴訟を起こし、男性への性差別もなくそうとしました。  こうすることによって、男性からの共感も得て、男女同権への運動を広めていくことが可能になったんですよ。もちろん、性別に関わらず性差別をなくす、というのが彼女の信念ですが、本当に賢い女性です」

ルース・ギンズバーグは死んでいるという陰謀説まで……

――ルース・ギンズバーグ判事を応援しているのはどんな社会階層なんですか? ウェスト監督「あらゆる年齢層の人達が映画を観に来てくれました。ルースのコスプレをした8歳の女の子も(笑)!性差別を受けてきた80代以上の女性や『(ルースの夫)マーティン・ギンズバーグを映画に登場させてくれてありがとう。男性のロールモデルとして彼を知ることができてよかった』と言ってくれた男性もいましたね。  ルースのファンにはやはり民主党派のほうが共和党派より多いでしょうが、「ルースの政治的意見には必ずしも賛成しないけれど、女性たちのために闘った彼女にとても感謝っしている」と私に話してくれた共和党派の女性の観客もいました」
『RBG 最強の85歳』より

『RBG 最強の85才』より

――映画はルースを批判する男性たちの声で始まっていますが、誰なのですか? コーエン監督「主に極右のトーク番組やラジオ番組の男性司会者ですが、トランプ大統領の声も混じっています(笑)。特に年配の男性のなかにルースの敵が多く、法律的・政治的意見だけではなく、彼女の外見、ジェンダー、年齢についてまで攻撃します。  要は、お年寄りの女性が男性に向かって意見を言う、なんてことが許せないんですね。ルース・ギンズバーグは本当は死んでいてすべては陰謀だという説を流す極右もいるんですよ!(笑)」 ――右寄りの人たちはこの映画を観たと思いますか? ウェスト監督「どうなんでしょうね。映画が公開される前に『こんな映画なんて絶対に観ない』と彼らが言っていたのを聞いていたので、公開後には彼らの攻撃を覚悟していたのに、彼らは何も言ってきませんでした。ということは、観てないんじゃないかな……(笑)」

“逆境”と母親から培った強さ

『RBG 最強の85歳』より

『RBG 最強の85才』より

――ハーバード・ロースクール在学中や就職時に受けた性差別、男女同権の訴訟、保守派の敵……そのほかに、ルースはこれまで2度の癌を乗り越えています。彼女の強さはどこから来ると思いますか? ウェスト監督彼女の強さは、逆境の人生と母親から学んだものだと思います。彼女が小さなときに姉が、高校を卒業するときには母が亡くなりました。どちらかというと貧しい、ブルックリンのユダヤ人家庭で育ちました。  ですが母親はルースには絶対に一流の教育を受けさせると心に決めていて、ルースを連れて図書館にできるだけ通い、彼女の知性を磨きました。母親が与えてくれた教育と授かった知的才能を活かして、世の中に貢献したいという強い願いが彼女にはあります」 ――ルースの母親は「淑女であれ、そして自立せよ」という素晴らしい言葉を遺していますよね。 ウェスト監督「ルース自身も素敵な言葉をたくさん言っていて、私が好きな言葉は「怒るのは時間の無駄」というもの。これは、“怒りを感じてもよいけれど、怒りに飲み込まれてしまうと自分自身に負けてしまう。怒りはベストの自分自身を引き出せない”という意味。まさしく賢者の言葉ですよね」
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女性は戦略的に闘う必要がある
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