鎌倉の人気お菓子クルミッ子は、もはやクルミである/カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」
【カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」Vol.36 鎌倉紅谷「クルミッ子」】
「クルミッ子」というお菓子をご存じだろうか。鎌倉の「鎌倉紅谷」が作る今人気の銘菓だという。
自家製のキャラメルにクルミをぎっしりと詰め込み、さらにそれをバター生地でサンドした代物らしい。
如何(いか)にも美味そうだと思う。
しかし、若干(じゃっかん)胃の年式が古いものからすれば過積載すぎて「誰か降りてくれ」というブザーが鳴らぬでもない。
しかし、結論から言うと、このクルミッ子、全く「こってりし過ぎ」ということはない。
特に見た瞬間「甘そう」と思うのだが、正直甘さに関しては「控えめ」と言っても良い。
なぜなら「クルミをぎっしり」の「ぎっしり」が冗談じゃなさすぎて、キャラメル部分はもはや「つなぎ」ぐらいの役割であり、バター生地も薄い。つまり「クルミッ子」はもはや「クルミ」なのである。
クルミが完全に主役であり、それを若干のキャラメルと香ばしいバター生地が引き立てている状態なので、全くクドくないのだ。ここでキャラメルもバター生地も「俺も!俺も!」と言い出したら、この菓子は重量オーバーで退場になっていたと思う。
そのものに濃い味があるわけではないクルミを甘いキャラメルが補い、さらにバター生地が食感と香ばしさを添え、非常にバランスの良い、食べるものを選ばない銘菓になっている、全国で大人気だというのも頷(うなず)ける。
しかもクルミはナッツ類でオメガ3脂肪酸を最も多く含んでいる。
それが何に良いのか見当もつかないが「オメガ」というからには強いに違いない。他にもクルミはいろいろ含んでいる栄養価の高い食べ物だ。
よって、クルミっ子は胃にクるどころか、一周回って健康に良い「ヘルシー菓子」のカテゴリに入れても良いのではないだろうか。
そんな売り切れもある人気商品にも関わらず、クルミッ子は未だに職人の手による手作りだという。正直「体力的にキツい」らしいのだが、それでも日本中で人気なのが嬉しくてたまらないので、「でもやる」という精神で手作りを続けているそうだ。
目先の利益ではなく、まずは純粋に人を喜ばせたいと思う心が後々利益を生む、という好例である。
「クルミッ子」はもはや「クルミ」なのである
職人の手による手作り「体力的にキツい」が「でもやる」精神
しかし、それは作り手が言うことであり、作らせる側が「後であなたの利益になりますから今はタダで」というと、ツイッターが炎上するので言ってはいけない。 これだけではただの良い話なので、もう一つ「クルミッ子検定」という記事(あなたは「クルミッ子検定」何級? 鎌倉紅谷の社長においしさの秘密を聞いてきた/Rettyグルメニュースより提供)がなかなかキレていたので紹介したい。
クルミッ子のローマ字表記の理由のコクが深い
「クルミッ子検定」とは、クルミッ子ファンという意味での「クルミっ子」たちへの挑戦状、というわけではなく、クルミッ子に関する社長へのQ&A集であり、この知識さえあれば、あなたもクルミッ子マスター、どこに出しても恥ずかしくないクルミっ子というわけである。 紛(まぎ)らわしいので先に進むが、まず1題目が「クルミッ子の正しい表記は?」だ。 さすが「検定」というだけあって「そこから?」という意外性がある。 まず答えから言うと「Kurumicco」だ。商品を若干ひねったローマ字表記にすることは珍しくないのだが、この表記になった理由のコクが深い。
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