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aikoのラブソングは“くすぶり世代”の傑作。20年の総集編『aikoの詩』

aikoの歌はデフレ世代のブルース

 かつて、伝説のブルースマン、ウィリー・ディクソン(1915-1992)は、「悪、無知、そして愚鈍こそが、事実なんだ。生きる上での紛れもない真実とは、そういうことなんだ」(『インスピレーション』 著:ポール・ゾロ、訳:丸山京子、アミューズブックス 2001年刊 p.36)と語りました。そう考えると、「キラキラ」は日本語のブルースと呼べるのかもしれません。
aiko キラキラ

「キラキラ」(2005、ポニーキャニオン)

 加えて、音楽的にも興味深い点があります。<今日は遅くなるんでしょう?>と<ヘッドフォンで音楽聴いてるね>の部分に、aikoにしかできない節回しのエッセンスが凝縮されているからです。  単純に“メロディを書く”という発想では、およそ出てこないであろうトリッキーな符割。こうした口述の強みが楽曲に活かされている点も、aikoにブルースっぽさを感じる所以(ゆえん)なのだと思います。  細かなことはさておき、こんなにも張り詰めた曲でありながら、ライブ映像を見ると、観客が本当に楽しそうに手を叩いて盛り上がっているのに驚きます。見たところ、惰性で乗ったフリだけしているような人はほとんどいません。  曲の本質はシリアスでありながら、ダイナミックなエンターテイメントの魅力も保ち続けている。改めてaikoが孤高の存在だと思い知らされるのでした。 <文/音楽批評・石黒隆之> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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