実際にコースに出ると、大人が思いきり足を伸ばさなければ渡りきれないようなステップがいくつもあり、子どもたちにはジャンプを強要しなければならなかったといいます。
「友人のお嬢さんは慣れているみたいで、一人でスイスイ進んでいきましたが、私は泣き叫ぶ息子を抱えて大変。自分だけでもいっぱいいっぱいなのに息子の心配もあって、恐怖が倍増しちゃったんですよね。変な汗はかくし、足も震えてくるし、パニック状態でした」

聞けば、マリさんたちが参加したツリートップアドベンチャーは、一度登ったら途中で降下用の階段やはしごはなく、地上に降りるにはゴールまでたどり着くしか術はなかったとか。
「そうなんです。途中から息子は泣き過ぎで過呼吸に近い状態になっていたにも関わらず、降りたくても降りられない状況でした」
もうとにかくゴールするしかない。そう決めて無我夢中で進む母子の前には、さらに試練が立ちはだかりました。
「自分で進むコースを決めなければならないのもプレッシャーでした。恐怖でほぼ思考停止状態なのに、『次はワクワクコース? それともハラハラコース?』なんて聞かれても、こっちはとにかく早く終わらせたいだけなんですから、はっきり言ってどうでもいいって感じ。結果的には無事にゴールできましたけど、平均の倍以上の時間がかかったんじゃないでしょうか」
ゴール後、ギブアップすることなくやりきった一行を最高の賛辞で迎えた親友。「できたじゃん! すごい、すごい」とベタ褒めされたマリさんの息子は、「またやりたい!」と笑顔で応えたとか。
「さっきまで大泣きしていたのによく言うよと呆れてしまいました。子どもは無邪気でいいですよね。でも私は二度とやりたくない。 次に同じような場所に連れて行かれたら断る勇気を持ちたいです」
―シリーズ よくもわるくも帰省の思い出―
<文/橘エコ イラスト/ただりえこ>
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アメリカ在住のアラフォー。 出版社勤務を経て、2004年に渡米。ゴシップ情報やアメリカ現地の様子を定点観測してはその実情を発信中。