時間は容赦なく過ぎるもので、あっという間に搭乗開始時刻です。一人でゲートにいるときも、憧れのCAやグラホの仕事を見てみようだなんて思えず、人に流されるように機内へ。自ら進んでの留学なのに、まるで何かに囚われているかのようで複雑。
離陸。いよいよ、本当に海外に行くんだと腹をくくらなくてはならないときがきました。「ホストファミリーに会ったらなんて挨拶をしよう」「ていうか、着いた翌日から学校だよね」、あー、大丈夫かなとモヤモヤしていると機内の照明が落ち、ほかの乗客が寝静まっていきます。私は初のロングフライトの緊張もあって眠れるわけもなく、ブランケットに包まって体を小さくしていたっけ。
それから何時間かすると、機内に灯りがつきます。CAが忙しなく動き出すと、フワッと食べ物の香り。機内食です。
偏食が酷かった私は、この頃食べ物の香りすらも苦手だった。それも機内という密室。いつもより食べ物の香りが濃く感じて、軽く乗り物酔いをしていたところにダブルパンチ。すっかり気分が悪くなってしまいました。なるべく香りに近付かないように寝たふりをして、機内食が自分のもとに運ばれてこないようにやり過ごす。これが海外への洗礼でした。
食事の時間が終わると再び機内が暗くなります。落ち着かない様子でゴソゴソと動いている私のもとに一人のCAがやってきて、「食事が取れそうだったら声をかけてくださいね」と。まだ言葉が通じる……、これから留学に行くというのに、日本語にホッとした瞬間。
2度目の機内食の時間です。自宅を出てから何時間も食事をしていないうえに、オーストラリアは食べ物の持ち込みが禁止で何も持ってこなかった私は、食べたいけれど食べられる物がない状態に直面。でも、食べなくてはこれからの留学生活に支障をきたすと、運ばれてきたミルクロールとオレンジジュースを口にします。
最後に、トレイの隅にあったチョコレート菓子。チョコレートを食べると肌に不調が出ていた当時の私にとって、好きだけど手を伸ばさないその存在。背に腹はかえられぬとひと口食べると、とても甘いはずなのに色々な感情が入り混じった涙と混じってしょっぱかった。もう立派な大人なのに、機内で泣きながらモグモグと食べる姿は、周りからどう映ったんだろう。
そんなこんなで私は初めての留学へと旅立っていったのでした。
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グランドスタッフの裏話 VOL11―
<文/高木沙織>
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高木沙織
「美」と「健康」を手に入れるためのインナーケア・アウターケアとして、食と運動の両方からのアプローチを得意とする。食では、発酵食品ソムリエやスーパーフードエキスパート、雑穀マイスターなどの資格を有し、運動では、骨盤ヨガ、産前産後ヨガ、筋膜リリースヨガ、Core Power Yoga CPY®といった資格のもと執筆活動やさまざまなイベントクラスを担当。2021年からは、WEB小説の執筆も開始。Instagram:
@saori_takagi