「明日死ぬと思って生きろ、永遠に生きると思って学べ」

マンガに人生をかけたいと思うのに「才能がない」と言われ、周囲には才能に溢れ、評価もされている人たちに囲まれ、コンプレックスにさいなまれていたお話をいくつもされていました。ああした葛藤の時期があったからこそ、人の弱い部分に焦点を当てる作品が描けるのですね。今、生きるのが苦しい人も、それがいつか糧になると思えばもうひと頑張りできそうです。
最後に山岸先生は、「明日死ぬと思って生きろ、永遠に生きると思って学べ」というガンジーの名言を引用されていました。……はい、そうします!
薄暗い会場で、90分に及ぶ先生のトークショーの最中、私の前の席に座っていた小中学生の女子たちが居眠りもせずに一心不乱に話を聞いていたのが印象的でした。
山岸凉子先生、私は、先生の作品で育てられました。女としての性を生きる意味や息苦しさ、社会の矛盾を教えられました。登場人物の持つコンプレックスにふるえる程共感しました。それが今の仕事に活きていると思います。行ってよかった!
先生のような大作家を生んでくれた上砂川町は、とても穏やかでステキな場所でした。

よく考えたら、滞在中に全然お金を落とさなかったので、ふるさと納税で支援しました。支援は2000円からと手軽で、道外の人はニジマス燻製がもらえるそうです。ウェブサイトから申請書をダウンロードし、必要事項を書いてメール添付すると、振込用紙が送られてきます。トークショーの入場料の代わりです。

このトークショーの内容は後日瀧晴巳さんによってまとめられ、2020年2月に文春文庫より刊行される『ハトシェプスト』新装版に収録されるそうです。

写真は1998年に出版された「ハトシェプスト―古代エジプト王朝唯一人の女ファラオ」(山岸凉子) 文春文庫―ビジュアル版
ハトシェプストは、古代エジプトでトトメス3世とともに国を治めた実在の女性ファラオです。そのハトシェプスト像を、山岸先生ならではのフィルタにかけて、女として生きることへの嫌悪感や違和感を持った女性として描いています。現在の社会状況において、どうしても女性は、性に関して鬱屈した思いを抱かずにはいられません。ああした性に絡めた自己否定の感情は、思春期の多くの女性が抱くのではないでしょうか。
『ハトシェプスト』を含めた、一連の古代エジプトや神話をモチーフにした山岸作品は、どれも胸が詰まりそうなほど「刺さる」名作です。
トークショーの載録と合わせて、楽しみにしています。
<取材・文/和久井香菜子>
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