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斉藤由貴が語る家族の絆「ご存知のとおり、私、いいお母さんじゃなくて」

「この人には私の見えない何かが見えてる!?」こぼれんばかりの瞳を斉藤由貴さんに向けられた瞬間、そう思った。取材部屋にふわっと入ってきた彼女はその佇まいといい、もの言いたげな眼差しといい、どこか天女のようだった(本当に!)。  11月1日に公開される『最初の晩餐』は、数多くのCMやミュージックビデオを手掛けてきた鬼才常盤司郎が7年もの構想を経て脚本を完成した初の長編映画だ。
斉藤由貴さん

斉藤由貴さん

 染谷将太、戸田恵梨香、窪塚洋介、永瀬正敏ら豪華キャスト陣が結集した本作は、不完全で脆い人間が日々紡ぐ家族の絆の崩壊と再生を、「食」から正直に切実に映し出す感動作である。主人公の母親アキコを演じた斉藤由貴さんに映画について語ってもらった。

家族には“思いやり”を含んだ距離感が必要

――本作は、様々な人間の絆を描いた人間ドラマや家族の秘密を紐解くミステリーとも言えますが、斉藤さんは作品のテーマをどのように捉えていますか? 斉藤由貴さん(以下、斉藤)「一番最後に私の中で残ったのは“礼儀”という言葉です。家族というのはお互いに素の部分をさらけ出す一番の存在。でも家族だからといって何でも言ってよいわけじゃなく、“思いやり”を含んだ距離感を保つ必要があるんじゃないか――。  永瀬さんが演じた日登志と私が演じたアキコは再婚同士で子供も連れ子同士。でもそれって親の勝手な都合ですよね。なのに子供たちは新しい関係性を構築していかなければいけない。根本に愛はあっても関係を築くことを強いられた家族なんです。つまり、“作られた家族の絆”や“壊れて再構築する家族の姿”がテーマだと私は捉えています」
『最初の晩餐』より

『最初の晩餐』より

削ぎ落とされた物語

――本作が初めての長編映画を監督した常盤司郎氏と一緒に仕事をした印象は? 斉藤「映画監督にとって最初の作品は、その方にとって一番大切で根源的な原風景だと思うんですね。例えば、数字で言うと0から1にするのって、2から3にするより難しい。全くの無から何かを生み出すということは、とても特別なことだと思います。常盤監督のパーソナルで大切な部分をキャストとして垣間見れたのは、とても幸運だったし光栄だと思っています」 ――常盤監督ならではのユニークな点はありましたか? 斉藤「いままでミュージックビデオや短編映画など、短い時間のなかで表現してきた監督だからこそできた、削ぎ落とされたセンスがあると思います。実際撮影しているときは、私たち俳優は素材なので客観的に見られませんが、編集を終えて出来上がった作品を見ると、やはり彼の映像のセンスのよさはスゴい!と感じました」

揺れる自分がいる

――斉藤さんが演じたアキコの経歴や過去は映画でほとんど語られません。なのに、とても彼女がリアルな存在に感じられました。 斉藤由貴さん「台本や監督とのお話から、アキコの生い立ちや仕事、どんな人生を生きてきたかということは撮影前に私の中にある程度落とし込んでいたので、『どんな風に演じようか』とか『どんな風に見せようか』とか、役を作りこむことは正直考えなかったですね。セットに入りほかの俳優さんたちと一緒に本番が始まると、自然とアキコになった感じかな」 ――演じるというよりは、役の内面を理解していくうちに役が下りてくるという感じなのでしょうか? 斉藤「うーん、作ろうって気はないですが、これも良し悪しだなって最近思います。私、根拠なく自分で自分を信じてるところもあって、これまでのやり方を続けていくのは危険なのかもって。緻密な計算の上で役を構築したほうがよいのかなって最近、私のなかで揺れているんです
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子供の声に耳を傾けられない、親のエゴや弱さ
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