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斉藤由貴が語る家族の絆「ご存知のとおり、私、いいお母さんじゃなくて」

子供の声に耳を傾けられない、親のエゴや弱さ

――とても印象的だったのが母と娘の絆の結ばれ方です。
『最初の晩餐』より

『最初の晩餐』より

斉藤「女同士ならではの絆ってあると思うんです。女性同士ってどこか言葉や立場を超えて分かり合える部分があるんではないでしょうか。最初、娘の美也子はなかなかアキコを受け入れませんが、アキコは女性としてお互い何かの接点があるはずだと距離を置きながら探っていきます。礼儀をわきまえて、子供の美也子をひとりの人間だと尊重し、『ここまで近づいていいですか?』と少しずつ距離を縮めていく……」 ――血の繋がらない親子関係を描いた映画の多くは、何かドラマチックな事件が起こり、それによって子供が親の愛を知る……というのがパターンですがこの作品は全く違いますよね。 斉藤「子供の気持ちを思いやりながらゆっくりと近づいていく。そういうアキコが私はとても好きなんです。私自身もそうなんですが、親ってついつい子供が思い通りにならないと『私があなたを養っているんだから』というエゴイスティックな態度に出てしまう。そこには何の根拠もなく何の正当性もないのに、自分の弱さを隠そうとして声を荒げたり子供の声に耳を傾けられなかったり……
『最初の晩餐』より

『最初の晩餐』より

――……分かります。私もアキコみたいな母親になりたいなって心から思いました……。 (自分の子供を理不尽に叱ってしまった過去が走馬灯のように脳内を駆け巡り、インタビュー中だというのにうつむいて沈黙してしまった筆者。はっと我に返り顔を上げると、涙で瞳がきらりと光る斉藤さんが。思わず筆者も涙ぐむ) 斉藤「(涙をぬぐいながら)そうですよね。アキコはすごく品よく子供たちに時間をかけて分かってもらおうとしている。そこがね、この映画にも共通する気がします。この映画は決して押し付けがましくないんですよ。監督の私小説をはらんだ家族の形を描いた映画はたくさんあると思うんですが、この作品は『家族とはこうだ!』みたいなメッセージがなく。だからこそ、色々な人が自分の人生や家族、人間との関わりをこの作品に重ねられる」

答えが出ないのが人生の真実

――この映画で描かれている様々な“完璧でない”人間像や人間関係を見て、ある意味ほっとし、なぜか涙してしまいました。 斉藤由貴さん斉藤人間ってみなずるかったり、卑怯だったり、見栄はったり、弱かったりするんですよね……。それをぜーんぶひっくるめて描いた2時間のこの物語を観ても、答えは出ない。でもその答えが出ないっていうのが人生の真実なんだと思う。  そして、この物語が生きたのも永瀬さんの存在がすごく大きいから。映画の後半にほとんど出てこないのに、彼の役がずっと物語を引っ張っていく。本当に力のある俳優はこんなことができるんだと改めて感じましたね。とにかく今回のキャストは素晴らしいチームでした。私には課題が残った感じがありますが(笑)」 ――手料理から家族の物語が語られる本作ですが、斉藤さんご自身も、お子さんたちが幼稚園の頃からずっとお弁当作りは欠かさないと聞いています。 斉藤「ご飯って生きるエネルギーであって、人間にとって一番裸に近いあたたかい悦びで、人間の核を作るもの。とは言え、私は確かに12年間お弁当を作り続けていますが、冷凍食品なんかも使っちゃってますよ(笑)。ご存知のように、私、よいお母さんでもなんでもなくて(笑)、ひたすら毎日食べ物を寄せ集めてお弁当を作っているんです。ただ、冷凍食品が入っていても自分が用意したものを子供が開けるのを想像したら嬉しいし、ありがとうって。それだけです(笑) 」 <文/此花わか 写真/我妻慶一> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
此花わか
ジェンダー・社会・文化を取材し、英語と日本語で発信するジャーナリスト。ヒュー・ジャックマンや山崎直子氏など、ハリウッドスターから宇宙飛行士まで様々な方面で活躍する人々のインタビューを手掛ける。X(旧twitter):@sakuya_kono
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