家出少女の感じる理不尽さは、家庭や職場でもあり得ること
――里奈や、ほかの家出少女たちへの取材を通して、彼女たちが本当に求める対応、そして私たち周りの大人ができることは、どのようなことだと思いますか?
写真はイメージです
鈴木「特に大人の女性が、
彼女たちの必死に自力で生きてきたライフストーリーを、『よくやった』『頑張った』って肯定して、その思いを尊重してあげることだと思います。彼女たちがどういう状況にあるかを理解した上で受け入れて、同じ女性という立場で、今後どうしていくかを一緒に考えてあげてほしいです。
家出少女たちの不自由は、同じような環境を飛び出した家出少年たちの不自由とは、明らかに「自由と被害」の天秤のバランスが違います。彼女らの不自由は、この世界に女性が女性で生まれたことで被る不自由の延長線上にあると言ってもいい。
女性性の理不尽さは、家庭や職場でも、多くの女性が感じているはずなので、あらゆる意味で彼女たちの思いと重なる部分があると思います」
――現在、多感な時期の娘を持つ母親へ伝えたいことはありますか?
鈴木「
女に生まれてあきらめてきたたくさんのことを、自分の娘さんには押し付けないであげてほしいです。『女の子はこうでなきゃダメ』とか、『嫁の貰い手がなくなる』とかはもうやめて、娘さん世代が挙げた声から、自分たちの我慢が当たり前ではないと気付いてほしいし、親子で協力し合って、女性性への理不尽さを打ち崩そう! という姿勢を持ってもらえたらうれしいです。
セックスのメリットデメリットや、売春は悪いことなのか、女性性をお金にする人がいることや、リスクなども含めて、ジェンダー教育を親子で語り合うことも大切だと感じます」
今までクローズアップされることのなかった、家出少女たちの秘めたる思い。限られた選択肢の中で、“かわいそうな犠牲者”と思われないために懸命に生きる姿は、彼女たちと同世代の女性、同じ年ごろの娘を持つ母親、そして、かつてその年齢を経験してきたすべての女性にも、何かしら重なる思いがあるのではないでしょうか。
●鈴木大介著『
里奈の物語』(文芸春秋、11月27日刊)
【鈴木大介さんプロフィール】
鈴木大介さん
1973年、千葉県生まれ。文筆業。長年にわたり、裏社会、触法少年少女らを中心に取材し、著書に『再貧困女子』(幻冬舎新書)『家のない少女たち』(宝島社)などのノンフィクション作品がある。
<文・取材/千葉こころ>
千葉こころ
ビールと映画とMr.Childrenをこよなく愛し、何事も楽しむことをモットーに徒然滑走中。恋愛や不倫に関する取材ではいつしか真剣相談になっていることも多い、人生経験だけは豊富なアラフォーフリーライター。