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夜の街で生き抜く家出少女たちは、かわいそうな被害者なのか

劣等感を抱えつつも、ほかの少女のために動く里奈

鈴木大介著『里奈の物語』(文芸春秋、11月27日刊)鈴木「あと、里奈は、家出少女にしては珍しく、自分語りをしない子でした。家族や、それまでに出会った人たちの話を、ときに泣きながら、一生懸命話すんです。自分にはきょうだいとの思い出があるから最悪ではないと言いつつも、ほかの家出少女とのギャップに劣等感を抱いている。  でも、自分よりもっとつらい環境の子を守りたいと、たとえ相手にウザがられても行動に移すような少女だったので、彼女の半生を追えば、単に家出少女という一瞬の像を切り取るだけでなく、それを生む環境と社会や、取り巻く世界観の本当の姿が描けるのではないかと思ったんです。 「貧困女子」的なノンフィクションコンテンツの文脈で当事者を見世物化することでは憐憫もしくは差別しか生まれず、当事者の本当の真情が伝わらないなら、もう書きたくないというのがルポライターとしてたどり着いた限界です。軸足は里奈という実在のモデルに置きつつも、従来のルポとはまったく違う、そのままを描く以上にすべてのリアルがきちんと伝わる方法で文字にしたいと願いました。結果として選んだのが小説という手段だったということです」

シャワーにもおびえる、虐待を受けていた弟

――いちばん印象に残っているのは、どのようなシーンですか?
虐待を受ける男の子

写真はイメージです

鈴木「里奈が養母のもとで、養母の実の娘と一緒に育てられているあいだに、実の母親は男女のきょうだいを産んでいました。ある日突然実の母が現れて、里奈たちのもとへその2人を置いていったので、里奈は一気に4人きょうだいのいちばん姉になったんです。  養母に代わって懸命に世話をし、可愛がったのですが、弟は虐待をされていたらしく、最初はまったく心を開かず、シャワーにもひどくおびえたそうです。その様子を聞いたときは、僕も平常心ではいられませんでした。  それから、里奈にかかわった少女らへの聞き取りの中で、里奈が里奈自身ではなくその少女らのために泣いてくれたことにものすごい感動して、一日一日を刹那的に生きる彼女たちにの中に、そんな少年マンガの主人公みたいなやつがいるなんてあり得ないと思った、なんて話があって。その子たちにとっては里奈が、生まれて初めて本気で自分のことを考えてくれる人間だったんですよね。やっぱり聞いてて泣きました」

信じられないほど当たり前のことを学ぶ場が必要

――家出少女たちに本当に必要な支援は、どのようなことだと思いますか? 鈴木「いきなり堅い話ですが、就労や進学などキャリア教育の支援よりも前に、ソーシャルスキルトレーニング(SST)をしないといけないと感じます。劣悪な環境から飛び出して自力で生きようとする少女らの多くは、そういった知識をつける時期に学べる環境になく、早くにセックスワークの世界に入っていることで、その世界のソーシャルスキルしか学べていないんです。  初対面の人にとってはいけない態度とか、困ったときは不良じゃなくて警察に相談するとか、倒れる前にきちんとご飯を食べるとか、本当に信じられないほど当たり前のことから学べる療育の場が重要だと思います」
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女性性の理不尽さは誰もが感じているはず
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