お母さんのぶっとびな日常にクスクスと笑ってしまう漫画である一方で、「こんなお母さんうらやましすぎる」「家族が仲良しすぎる」と思えるほど、この漫画が
家族の愛情に満ち溢れていることに気付かされます。
並庭 マチコ 『プリンセスお母さん 』、「私と料理」より
並庭 マチコ 『プリンセスお母さん 』、「私の姉」より
なぜ、一国の姫設定でお母さんは生活をしているのか、という問いにお母さん自身が「
憧れの世界でもなんでも、楽しく自分の心のままに生きたいから」とこたえています。
お母さんは幼いころに、実の父親の暴力や厳しい家族のもとで制限された暮らしをしており、自由に楽しく生きる自分なりの方法を「姫」を演じることで見つけ出したようです。そして、幸せそうに歌うビートルズの姿に感銘を受け、
境遇に嘆くことも自分を卑下することもなく楽しく生きようと誓います。
「自由に楽しく生きること」を意識することで、お母さんは自分だけでなく愛すべき家族も守り通してきたのではないでしょうか。作品の中で、このことが詳しく語られているのですが、読むとお母さんの深い信念を感じて泣けます。
一国の姫であるお母さんの言動に爆笑する一方で、最後には号泣。
人はもっともっと自由であっていいんだと、作品を読んで深く考えさせられます。
作者の並庭さんは作品や家族についてこのように語っています。
――お母さんを漫画にしようと思ったきっかけを教えてください。
以前、息抜きで描いた姉の実録マンガをツイッターに投稿したところ反響があったので、創作マンガのネームがなかなか進まなかった時期に、母のこともマンガに描いてみようと思って公開しました。そのときは継続して描くつもりはありませんでした。
――家に帰れば、プリンセスなお母さんがいる生活は、並庭さんにとってどんなものですか?
プリンセスというか、
母の元気でお茶目な言動をみていると、自分も元気をもらえてありがたいです。自分が疲れていると、ちょっとうまく反応できないこともありますが(笑)、これだけ長く家族をやっていても予想外の言動がくるので、飽きないですし楽しいです。
――お母さんだけでなく、天然過ぎるお姉さん、(『プリンセスお母さん』の発売にあたり、並庭さんの下着を売ろうとした)パンツ売りの弟さんなど、とても楽しそうなご家族ですが、「この家族にして、私あり」と思われたご経験などありますか?
「パンツ売りの弟」って童話みたいですね(笑)。自分が家族と共通してると感じる場面は、好奇心が旺盛だったり、主義主張がはっきりしていたり、音楽が好きだったり、日常的にたくさんありますが、とくに母については、
私も10代のころベルばらの影響で貴族ごっこしていましたし、妄想が激しく、推しへの愛も重いので、似てると思うことがしょっちゅうです。
あとは
母・姉・自分、3人ともヤバめのドジです。
――収録されているお話で、家族内でお気に入りのエピソードもしくは並庭さんご自身が特にお好きなエピソードありましたら、教えてください。
家族がどの話を気に入ってるかはとくに聞いてませんが、母からは、
母が過去に飼ってた愛犬のトヨについてのマンガを描いたらとても喜んでくれて、お礼を言われました。私自身は、巻末描き下ろしの家族旅行の話が気に入っております。当時のドタバタを楽しく思い出しながら、私の家族らしい話を紹介することができたので、是非読んでもらえたら嬉しいです。
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爆笑も愛も全てつまった『プリンセスお母さん』。レトロでかわいいイラストや「シャラランセ」など、お母さんが動くときに発生するかわいらしいプリンセス効果音に心も癒されます。
【並庭マチコプロフィール】
ギャグマンガ家・イラストレーター。多摩美術大学を卒業し、2017年に商業誌デビュー。2019年11月29日に初のコミック『プリンセスお母さん』を上梓。Twitter⇒
@manga_m
●『
プリンセスお母さん』(KADOKAWA)
並庭 マチコ 『プリンセスお母さん 』(KADOKAWA、2019年11月29日)
<文/瀧戸詠未>