流産1回と子宮外妊娠1回。7年の不妊治療で夫婦が見つけた答えに涙
赤ちゃんの心音は飼い猫の心音と同じくらいだった
度重なる悲しみを経験し、一時は天国へ行ってしまおうか……とさえ考えるほど心は限界に。そんな恭子さんをこの世に踏みとどまらせたのは2匹の飼い猫たちの存在でした。「大事な猫たちを置いていくことは出来ないと思い、堪えました。エコーで聞いた赤ちゃんの心音は飼い猫の心音と同じくらいの速さだったので、今でも時々、猫の胸に耳を当てて心音を聞かせてもらうことがあります。」
子供が欲しい。授かりたい。育てたい。一緒に買い物に行きたい。成人式を見たい。孫が見たい。――不妊治療中に抱いていた様々な願いは結果的に叶わなくなってしまいましたが、治療を止めると決めた40歳を迎えた日、恭子さんが感じたのは安堵の気持ちだったそう。「いろんな未来を想像していましたし、夫も私も子どもが好きなので産めないことは辛かったですが、7年の不妊治療でやるだけやったので悔いはありませんでした。」
涙を流す日を何度も超え、こう言い切れる恭子さんの強さをかっこいいと思うのは、きっと筆者だけではないはず。「子なし」という選択の裏には苦しんだ傷痕だけではなく、その結論を下すまでに至った女性のたくましさもあるように思えてなりません。
「子どもはかわいいわよ?」の言葉はいらない
しかし、夫婦仲は至って良好で、ご主人は恭子さんが40歳になった時、「2人で生きていくのもきっと楽しいよ」と言ってくれたのだとか。「子はかすがい」と言う言葉がありますが、恭子さん夫婦の間にはまた違うかすがいがあるようです。
愛猫のおかげで辛さを乗り越えられた。そう語ってくれた恭子さんはデリケートな話題だからこそ、人に話すことで心のモヤモヤを減らしてきたと言います。子どもが持てなかった経緯は聞かれたくない話題ではあるけれど、ひとりでは抱えきれない経験でもあります。話すことで楽になる。そんな選択肢で前を向ける人もいるからこそ、誰かの人生を心ない言葉で攻撃したり可哀想と包み込んだりする「押し付け」を持たない社会を作っていきたくなります。
―シリーズ「親としてのエピソード集」―
<文/古川諭香 イラスト/ただりえこ>
⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】古川諭香
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291
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