ビートたけし再婚。長年の妻を捨てて、最後の恋に走る熟年男性の心境とは
<亀山早苗の不倫時評>
次々と報道される有名人の結婚離婚。その背景にある心理や世相とは? 夫婦関係を長年取材し『夫の不倫がどうしても許せない女たち』(朝日新聞出版)など著書多数の亀山早苗さんが読み解きます。(以下、亀山さんの寄稿)
タレントのビートたけし氏(本名:北野武/73歳)が、自らテレビの生放送で再婚について語った。
昨年5月、40年連れ添った妻と離婚、18歳年下の愛人とすでに8年ほど一緒に暮らしていると言われていたが、再婚していたのである。再婚したのがいつかは明らかにしていない。
長年、別居状態にあったとはいえ、彼は、糟糠(そうこう)の妻である前妻との関係を「親友みたいなもの」「たまに会うくらいがいいんだよ」と称し、「いい距離感の夫婦関係」を強調していた。だからこそ、突然の再婚に「老いらくの恋」のような言われ方をしている。
たけし氏は、「お笑いのたけし」と「映画監督の北野武」を自身に内包している。おそらく発想も感性も考え方も、微妙に異なっているのではないかと思う。古希(※70歳のこと)を過ぎ、それぞれの分野における自身の「感性」に多少なりとも自信が揺らいでいることはじゅうぶんに考えられる。何かを創り出す、生み出すには常に新しいアンテナが必要なのだ。
周りはもはや、彼に何かを言えない状態にあったのかもしれない。自分が時代や新しい感覚からずれていないかを計る術がないのだ。たとえ古い感覚で生きていくとしても、新しいものを知っていて古いものを選択するのと、新しいものを知らずして古いものに固執するのとでは、お笑いにせよ映画にせよ表出してくるものは異なってくる。
そんなとき、A子さんが出現した。18歳年下とはいえ、彼女自身も人生経験は豊富な世代。そしてなにより、彼を巡るさまざまな煩わしいことから解き放ってくれたのではないだろうか。たとえば事務所とのやりとり、軍団との関係などなど。単なる男と女を超えた関係がそこには存在した。
「今からでも、残りの人生を彼女に預けてみたい」
彼はそう思ったかもしれない。だから事務所も糟糠の妻も捨てて、新しい人生に賭けた。彼の仕事と、彼の人として男としての人生に惚れ込んでくれた女性とともに。
「残りの人生」を考えた、ビートたけしの再婚という選択
事務所も糟糠の妻も捨てて、新しい人生に賭けた
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