「物腰柔らかくて優しいし、韓国のことも詳しいし最高なんだよね~」とのろける友人に内心穏やかではない結城さん。うまく相槌がつけなくなっていきます。
「でも、韓国人ならみんなそうなのかもしれないし。そうポジティブに解釈しつつも、しどろもどろしながら、彼女に『
めっちゃいいいじゃん! その人、名前なんて言うの?』と聞いてみました。……
彼女の口から聞いたのは、私の彼氏と同じ名前でした。もう頭が真っ白でしたよ…」
知り合ってすぐだけど、彼の誘いで一緒に住むことになったと、
嬉しそうに話す彼女が見せてきたツーショットの写真に写るのも、やっぱり自分の彼氏なのです。でも、彼女はすでに彼と同棲しているというのですから、私の方が遊びだったのでしょう」
「私はとうとうその日、『その人、私も会った。浮気されてるよ』とは言えませんでした。
自分に話が振られてからは、ふんわりと設定を濁しながら話を流しました。その子たちもSNSで知り合った趣味友でしかないため、雰囲気を悪くするのがイヤだったからです」
女子会をしたのは彼と付き合うことになって5日目のことだったとか。
「
まだ彼とキスすらしていなかったから……そのままLINEをブロックしました。アプリで知り合っただけなので、ブロックすればもうそれ以上はアプローチのしようもありませんから。彼とはそれきりで、趣味の女子会ももう半年ほど顔を出せていません。なんだか惨めで。ダイエットどころか、ストレスで3キロ増量しました」
そう悲しそうに話してくれた結城さん。マッチングアプリでは相手の特徴や環境で検索をかけられることもあるので、特に異性のタイプが似ている同性とは、気づかないうちに男性が被っているということもあり得ます。環境が違う相手同士が出会えてしまう、マッチングアプリならではの事件でした。
―シリーズ「忘れられない出会いと別れ」―
<文/ミクニシオリ イラスト/とあるアラ子>
ミクニシオリ
1992年生まれ・フリーライター。ファッション誌編集に携わったのち、2017年からライター・編集者として独立。週刊誌やWEBメディアに恋愛考察記事を寄稿しながら、一般人取材も多く行うノンフィクションライター。ナイトワークや貧困に関する取材も多く行っている。自身のSNSでは恋愛・性愛に関するカウンセリングも行う。Twitter:
@oohrin