SMプレイ用の縄の手入れ中に、死にかけた“女王様”。命の恩人は猫
危機一髪と聞いて何を思い浮かべますか? 女王様として、SM店に勤務していた都さん(仮名・年齢非公開)は、自宅で深夜、人生で1番の九死に一生を得る経験をしたことがあるそう。当時を振り返りこう話します。
「ある日、プレイで使う縄を手入れすることにしたんです。麻縄といって、市販の縄を量販店などで買い、表面の薬液を落とし、ロウや馬油などでなめしてから使います。最近は専門店でこの下準備を終えた縄が売っていますが、とにかくこの準備が面倒。薬液の落とし方には色々あるのですが、1番確実なのは鍋で長時間煮ることなので、私は大きな鍋に縄を入れ、グツグツと数時間煮ることにしました」
煮出している時の縄は、なんとも言えないニオイで、彼女は少し経っては水を足し、また少し経っては水を足しと、こまめに様子を見ていたそうです。
「でも私、疲れてて途中で寝落ちちゃったんです(笑)」
時刻は深夜2時を過ぎた頃。ソファでグーグーいっていた彼女の頭を、愛猫がカリカリするではないですか。彼女はやっと目を覚ますと……部屋が大変なことに!
「寝てる間に鍋の水が蒸発しきり、部屋の上の方には焦げ付きからくる黒い煙が溜まり始めていました。とっさにヤバい!!と思い、火を消し鍋に水をかけたら、今度は水蒸気のような大量の煙がぶわーーーっと立ち上り、部屋中煙だらけに!」
猫はにゃーにゃーなきわめき、彼女は慌てて窓という窓をあけ、パタパタとあおいで煙を追い出します。幸い火災報知器は作動しませんでしたが、その様子は完全に火事の始めだったそうです。
「なんとか無事で済みましたが、縄はもちろん鍋も死亡。そして部屋には数日間焦げ臭いニオイが残りました。とはいえ、無事で本当によかった。その話を後日ほかのスタッフたちにしたら『洗濯機で洗えば多少薬液は取れる』と教えてもらい、あの苦労はなんだったのかとトホホ。
でも猫が起こしてくれなかったら、私はそのまま一酸化炭素中毒になっていたかもと思うと、ゾッとします。あとこの教訓を元に、現在はガスが自動停止するコンロを使ってます」
都さんは「もしあのまま火事で死んだら、きっと警察は死因を見つけて首を傾げると思うと、怖いやら恥ずかしいやらで、今でも背筋がゾゾっとなりますね」とも話します。笑い話で済んだものの、火事は誰にも起こりうることなので注意しましょう…。
―シリーズ「危機一髪だった瞬間」―
<文/しおえり真生・イラスト/やましたともこ>