「孤独のグルメ」ブームから“おうちごはん”系へ。グルメドラマの主流が変化したちょっと寂しい裏事情
三谷幸喜氏脚本『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ系)や競馬を題材にした日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)など、華やかな話題作が多い10月期ドラマ。
その中でも地味にシリーズを重ね、密かな期待を集めているのが深夜のグルメドラマ『ワカコ酒season9』(BSテレ東)と『晩酌の流儀4』(テレビ東京)です。
『孤独のグルメ』(テレビ東京)以降、グルメドラマはジャンルが確立され、ゆるく見られるコンテンツとして人気を集めるようになりました。ですがコロナ禍以降、その潮流に変化が表れてきたことをご存じでしょうか。
古くから『天皇の料理番』(TBS系/1980年)や『美味しんぼ』(フジテレビ系/1994年)『味いちもんめ』(テレビ朝日系/1995年)など、料理をテーマとしたドラマは数多くありましたが、あくまでも人間ドラマやストーリーが主軸でした。
グルメを添え物としてではなく、各話のメインとして扱うことで革命を起こしたのは、前述した『孤独のグルメ』(2012年)でしょう。
実際の店を訪れ、実際に出されているメニューを食事するというセミドキュメンタリー的な試みは、その後『ワカコ酒』(2015年)や『女くどき飯』(TBS系/2015年)『いつかティファニーで朝食を』(日本テレビ系/2015年)『ラーメン大好き小泉さん』(フジテレビ系/2015年)など、追随するグルメドラマを数多く生み出しました。
『孤独のグルメ』に登場した店は、翌日から行列ができ、“聖地巡礼”として国内外から人が訪れるようになっていると聞きます。視聴者だけでなく、飲食業界内からも一目を置かれるようになる、いわば称号のようになるのだそうです。
しかし、ここ数年、実際の店を訪れる形式のグルメドラマはぐんと減りました。『きのう何食べた?season2』(テレビ東京系/2023年)などのおうちごはん、あるいは『深夜食堂5』(Netflix/2019年)のような料理人が主役となる形式が主流となっています。



