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年収が上がりすぎると人は幸せになれない?人気評論家が見つけた「小さな幸福」の重要性

 マーケッターで人気評論家の牛窪恵さんが、自身の阪神タイガース愛も込めた新著『「幸福感」に満たされたいなら阪神ファンを知りましょう』(集英社)を出版しました。
牛窪恵さん

牛窪恵さん

 プロ野球チームの「推し活」に日々没頭する牛窪さんが、専門とするマーケティングや行動経済学の知見もたよりに導き出したのは、誰もが共感しうる普遍的な「幸福論」です。  牛窪さんの「タイガース愛」などについて聞いた前編に続き、本稿では「小さな幸せ」を積み重ねるのが大切と説く、牛窪さんがすすめる理想的な生活を聞きました。 【前編】⇒なぜ阪神ファンはあんなに幸せそうなのか?元巨人ファン・牛窪恵が分析「野球にくわしくなくても使える」

日常的な「小さな幸せ」を積み重ねて

応援風景――20年来のファンであるタイガースの推し活で「幸福感」に満たされているという牛窪さん。新著では、幸福度を高める秘けつとして「小さな幸せ」の積み重ねが大切だと述べていました。 牛窪恵(以下、牛窪) はい。私の愛するタイガースでいえば、チームが勝ったり優勝したりするのはもちろんうれしい。でも「幸福感」に繋がる快楽物質のドーパミンは、実はそうした「結果」に対してよりも、途中の過程で「きっといい結果が出る!」と期待してドキドキワクワクすることによってこそ、多く放出されるんです。つまり、幸福実感のポイントは「大きな幸せを得ること」より、「小さな幸せ(期待)を募らせること」なんですよね。 こうした日常的な「小さな幸せ」を持続可能にするのが、新著の3章「幸福持続の法則」で紹介した、「偶然の出会いを求める行動(セレンディピティ効果)」だったり、「次はこうなるとの推理(インファレンス効果)」だったりします。 また、アメリカの心理学者セリグマンによる「PERMAモデル」も重要です。PERMAは、持続的な幸福感に関わる5つの要素の頭文字ですが、日本語に置き換えると「ポジティブな感情」や「没頭」「人間関係」「人生の意義」「達成感」などとなります。推し活はまさに、この多くを兼ね備えていますよね。つまり、「ポジティブな感情」をきっかけに推しに惹かれ、ファン同士が良好な「人間関係」を築きながら「人生の意義」を見出し、なんらかの「達成感」を得る。 実はそのとき、半ばクールな状態でいるよりも、時間を忘れるほど対象に「没頭」することこそが大切だとされています。まさに、熱いファンが多い阪神ファンはその代表で、昨今注目される「ウェルビーイング」を実現するためにも、大切なお手本(サンプル)なんです(笑)。

「偶然の出会い」が幸福感を高める

牛窪さん――新著では「令和は情報過多な時代」とも述べていました。SNSなどでは他人が華やかな生活を送っているように見えて、過度に他人をうらやんでしまったり、自分にとっての幸せを見つけるのも難しいのかなと思います。 牛窪 大切なのは、なんらかの行動、アクションを起こすことですね。大げさに何かをする必要はなくて、近所を散歩してみるだけでもいい。たとえば、通ったことのない路地に入ってみると、思いがけず美味しいお店が見つかって「なんか得した」「今日はツイてる」など、うれしくなることがあります。これが、行動経済学で言われる「セレンディピティ効果」です。 皆さんはそんなとき、事前に「美味しい」との評判を調べて行ったお店より、幸福感が高まるのではないでしょうか。人は「偶然の出会い」によって喜びを得ると、脳の「報酬系」と呼ばれる神経回路が普段より活発化して、ドーパミンがより多く放出されます。つまり、ルーティンからはずれた行動を起こすのが、幸運や幸福感のポイントでもあるんです。 ――いわば、ささいなことでもいいから冒険してみるのが大切だと。 牛窪 そうですね。また、ときめく体験がないと、自分がどんな対象に心を惹かれるのか分からない。恋愛と一緒ですね。ただ、心身が疲れているとその余裕がなくなりますから、幸福感を実感するためには、心を落ち着かせてリラックスできる時間も必要です。私は皆さんに、「1週間に30分でも1時間でもいいから、意識的に『ひとり時間』を持ってください」とお薦めしています。 実はコロナ禍でデジタル化が進んで以降、先進国の多くの国で「デジタルストレス」が急増しました。特に真面目な方ほど、スマホに相談ごとの連絡が入ってくると「即レスしなければ」などと振り回され、ストレスが溜まりやすくなる、という研究結果もあるんです。ですから、ほんのわずかな時間であっても好きな曲を聴いたり、好きなお店で1杯だけコーヒーを飲むといった時間が、より重要になっています。
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周りへの「感謝」を記録するのも大切
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