犬猫の殺処分の現場を見て、ショックでしゃがみ込んだ【写真家・尾崎たまきさんに聞く】

 ネット上には猫や犬の可愛い動画があふれ、かつてないほど犬猫好きが増えているように見える昨今。でも一方で、年に約12万8000頭の犬猫が殺処分されている現状があります(平成25年度)。その現実を取材した『お家に、帰ろう 殺処分ゼロへの願い』を上梓した写真家・尾崎たまきさんと、『迷子のミーちゃん 地域猫と商店街再生のものがたり』の著者である木附千晶さんの対談を、前回(「犬・猫の殺処分ゼロを達成した自治体とは?」)に続いてお届けします。

気軽に飼って無責任に捨てる人たちも



木附:ペットブームで犬猫をかわいがる人が増えているのにどうして捨てられるコが減らないのか不思議です。

 私は常々、ドイツみたいにペットショップでの生体の販売を禁止し、シェルターかブリーダーからしか手に入らない仕組みにすべきだと考えています。渡すときは飼い主の適性をチェックし、引き渡し後は報告も義務づけて。

尾崎:気軽に飼って無責任に捨てる人もいますよね。私も取材中にそういう飼い主に持ち込まれたコを見ました。それに迷子になるコもとても多いんです。とくに老犬。大好きな飼い主さんが迎えに来てくれると信じながら、ひとりぼっちで、怖く冷たい殺処分場で最期を迎えるなんて……見ていてとても辛いです。

⇒【写真】はコチラ http://joshi-spa.jp/?attachment_id=351521

殺処分の現場

写真はすべて、尾崎さんが殺処分の現場を取材したある施設

木附:でも、迷子になったら最初に保健所に問い合わせるのでは?

尾崎:「いつか帰ってくる」とのんびり構えている人もけっこう多いんです。ある施設のスタッフが「すごい賢くて人なつっこいコだから捨てられたのではないのかも」と言うので一緒に飼い主を捜したことがあります。

 SNS発信やチラシを近辺のスーパーや動物病院に配ったり、地元の新聞に情報を載せたり。そうしたら、新聞を見た近所の人に「お宅の犬じゃない?」と言われたという飼い主さんが出てきたんですよ。

木附:「探し方を知らない」のかも。(地域猫の)ミーちゃんがいなくなったときも、みんな「どうしよう」とは言うものの途方に暮れてる感じで、行動に移す人はあまりいませんでした。

子猫尾崎:いなくなったら、すぐ保健所や警察に連絡して欲しいです。あらかじめ迷子札を付けるなどして飼い主を捜せるようにしておくことも忘れずに。首輪は外れることもあるからマイクロチップだともっといい。室内飼いでも、雷で逃げ出したり、震災に遭うこともある。

 迷子になったらどんな運命をたどるのかをちゃんと知って、万が一に備えておいて欲しいです。

忘れられない「白い犬」



木附:殺処分の様子を具体的に教えてください。

尾崎:猫はコンビニに置いてあるアイスクリームの冷蔵庫くらいの大きさのガス室。犬の場合、小さな2畳くらいの広さで、おとなは立てないくらいの高さのガス室に柵で押しこまれ、すし詰め状態で死んで行きます。

木附:犬と猫は別のガス室で殺処分されるんですか?

尾崎:そうでないこともまれにあります。以前、まず子猫を袋に入れてポンッと投げ込んでから、犬を30匹くらい追い込んで処分していた所を見ました。もう踏みあいです。たぶん子猫は犬に踏まれて、ガスが送られる前に死んでしまっていたのでは。

 もし生きていたとしても、呼吸量の多い大きい犬ほど早く死ぬので、小さい子猫ほど長く苦しみながら死ぬことになります。

ガス室木附:遺体は燃やすんですよね。

尾崎:はい。基本的には殺処分後、すぐに焼却炉に移されますが、処分数が少ない施設ではある程度の数がたまるまで冷凍庫で保管することもあるようです。燃やして灰にして、最後は一般ゴミと一緒に埋められます。

木附:ゴミ、ですか。ちゃんと生きていた命なのに。聞いているだけで苦しくなります。尾崎さんはどうやって気持ちの整理をされているんですか?

尾崎:私も最初は辛くて撮った写真を見返せませんでした。

 でも、写真集に出てくる「白い犬」(『お家に、帰ろう 殺処分ゼロへの願い』46~51ページ)のように、檻の隙間からじっとこちらを見て訴えているコたちの目を見ていたら「私はこのコたちの現実を伝えるために撮ってるんだ」って気持ちを切り替えられたのです。

 それがカメラマンである私のすべきことだって。

白い犬

尾崎さんが出会った「白い犬」

白い犬

 はじめて見た殺処分場で尾崎さんが出会った犬。まるで人間のような顔立ちをした「白い犬」は、とても静かな表情をしていた。これから迎える死も、理不尽な殺処分のことも、飼い主から捨てられたことも、何もかもを悟ったような表情で尾崎さんをまっすぐ見つめていた。

 後に、撮影した写真を見返すと、「白い犬」はどの写真でも不安そうな犬を懐に抱え、まるで子どもを守る母親のように、おびえる犬のかたわらに寄り添っていた。

 息絶えた犬たちを殺処分機の小窓から撮影した写真でも、何かを伝えようとするかのように小窓の方に顔を向け、みんなを守るかのように折り重なった犬たちのいちばん上で横たわっていたという。

尾崎たまきさん

尾崎たまきさん

※続く、第3回「犬や猫が生きづらい社会は、人間にとっても生きづらい【殺処分ゼロへの願い】」はこちら

⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】

【尾崎たまきさんプロフィール】
熊本県出身の写真家。水中写真のほか、水俣、三陸、動物愛護センターなどをライフワークとして追い続けている。写真集に『うみかぜ日記』『水俣物語』など。最新刊お家に、帰ろう 殺処分ゼロへの願い』の写真展が東京・八重洲ブックセンターで開催中(2015年9月23日 まで)

【木附千晶さんプロフィール】
木附千晶さん臨床心理士。IFF CIAP相談室セラピスト。文京学院大学非常勤講師。子どもの権利のための国連NGO・DCI日本『子どもの権利モニター』編集長。共著書に『こどもの権利条約絵辞典』など。愛犬家・愛猫家でもあり、著書『迷子のミーちゃん 地域猫と商店街再生のものがたり』を原案とする映画『先生と迷い猫』が10月10日に全国公開

お家に、帰ろう~殺処分ゼロの願い

人間の無責任という罪で消されるいのち。殺処分の現場を目の当たりにした著者は、憤りとショックでその場に座り込んだまま立ち上がることすらできなかった。そしてその怒りは、いつしか「殺処分ゼロ」を強く願う意思へと向かう。絶望の淵から希望へとつなぐ「いのち」のエッセイ。

迷子のミーちゃん~地域猫と商店街再生のものがたり~

再開発が進んで寂れてしまった、日本のどこにでもあるような商店街に住み着いていた地域猫のミーちゃん。ところがある日、ミーちゃんは行方不明になってしまいます。いなくなってからわかった、小さな存在が私たちに教えてくれたこと…。

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◆木附千晶

臨床心理士。IFF CIAP相談室セラピスト。文京学院大学非常勤講師。子どもの権利のための国連NGO・DCI日本『子どもの権利モニター』編集長。共著書に『子どもの権利条約絵辞典』など。愛犬家・愛猫家でもあり、著書『迷子のミーちゃん 地域猫と商店街再生のものがたり』を原案とする映画『先生と迷い猫』が公開。

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